2016年4月18日
消費税の10%への増税に伴い導入される予定の軽減税率の議論が進んでいます。そして税制改正大綱では、軽減税率の導入時に必須と言われていた「インボイス制度」についても、平成33年4月の導入が明記されました。賛否様々な意見が聞かれる同制度について、税理士や事業者への影響を考えてみましょう。
インボイスは「送り状、請求書」を意味します。消費税制におけるインボイスとは、欧州などで導入されている、付加価値税の税率や税額が記載された請求書のこと。仕入税額の控除は、インボイス記載の金額にのみ認められます。
日本においてもインボイス制度導入議論は消費税創設時からありました。今般議論が再燃した最も大きな理由は、軽減税率の導入が現実味を帯びてきたこと。軽減税率では、税額が商品ごとに異なることになるため、売り上げをまとめて税率をかける「請求書等保存方式」では税額計算が困難になります。インボイスは、軽減税率導入の絶対条件という声もありました。
そしてこのほど発表された平成28年度税制改正大綱で、インボイス制度は平成33年4月「適格請求書」という名称で導入されることが明記されました。
インボイス制度導入後、仕入税額控除を行う事業者は、「適格請求書発行事業者」として登録を行い、登録番号が付与されます。請求書作成の際は登録番号の記載が必要となり、記載された税額を足し、合計の仕入税額を計算することになります。
支払税額の捕捉、益税防止等の観点から、透明化に効果の高い同制度ですが、デメリットも指摘されています。日本税理士会連合会は、かねてインボイス制度導入には反対の姿勢を示してきましたが、その大きな理由は中小企業の事務負担が増えることです。
新制度では、適格請求書発行事業者登録にかかる手続き、記載事項に則った請求書の作成、そして従前、税込み経理を行っていた場合の税抜経理への変更など、中小企業に事務負担増が起こると考えられます。会計ソフトの更新・設定など、システム変更も必要になります。
インボイス制度導入によるの中小企業にとってのもう一つの懸念は、適格請求書発行事業者として登録されていない業者、つまり免税事業者からの仕入れを避けることで、小規模事業者が打撃を受けること。これについては改正大綱で、免税事業者からの仕入れについて、消費税額相当額の8割ないし5割を控除対象とするとの6年間の経過措置が設けられるとされましたが、中小企業への悪影響がどれほど発生するのかは不透明です。
税理士の皆様も、同制度へは賛否両論それぞれお持ちだと思いますが、いざ制度がスタートすることになった場合、税理士が実務サポートにおいて唯一無二の重要な役割を担うことは言うまでもありません。顧問先への助言だけではなく、経理体制整備のためのスポットでのコンサルティング需要も発生する可能性があり、理論と実務を総ざらいする必要があるでしょう。