2016年7月19日
企業の景況、財務の状況は、顧問となる税理士の業績や業務内容に大きく影響します。とくに税理士は、アベノミクスの成果の有無が多く取りざたされる、中小企業の経営状況が気になるところでしょう。そこで今回は、国税庁と中小企業庁による、企業業績に関する公的な統計をもとに、中小企業の景況を概観してみます。
まず、毎年度大きな話題となる国税庁の会社標本調査の中から、欠損法人の割合を紹介します。企業の大小にかかわらず、法人数に占める比率が割り出されているため、全体の大半を占める中小企業の状況がよくわかる数字といえます。
平成26年度分の法人数260万5,774社(連結子法人除く)。そのうち欠損法人は172万 9,372社で、割合は66.4%となりました。平成25年度分では、法人数258万5,732社で欠損法人 は176万2 ,596社 。68.2%であり、欠損法人の割合は減少しています。(国税庁ホームページより)
国税庁の統計から、近年税理士の間ではよく「企業の7割は赤字」という言葉が語られることがありましたが、赤字企業は7割を切っており、黒字企業の割合が増えていることがわかります。利益が出せない企業が淘汰された結果といえるかもしれません。
次に、3月末に公表された、中小企業庁の「平成27年度中小企業実態基本調査」をみます。中小企業全体の売上高は493兆円で、前年度比で2.2%減少しました。しかし、経常利益は18兆7,163億円で、5.0%増。売上高経常利益率は3.15%で、前年度から0.28ポイント上昇しています。ここからは、中小企業の経営合理化が読み取れます。
そして興味深いのが中小企業の事業活動の変化。海外に子会社、事業所等を持つ中小企業の割合は0.9%で、前年度0.1ポイント増。また、新製品または新技術の研究開発を行った法人企業の割合は2.4%で0.3ポイント増、特許権・実用新案権・意匠権・商標権を所有している法人企業の割合は5.2%で、前年度から0.3ポイント増加。ここからは中小企業が、従来は手掛けることがなかった付加価値の高い事業を探る様子が見て取れるのではないでしょうか。
これらの統計からは、黒字化できる企業とそうではない企業が二極化していく流れにあることがうかがわれます。また、そのような状況で、経営の合理化や生産性の向上に取り組む企業の存在も浮き彫りになります。税理士に求められることは、顧問先企業に、付加価値を生み出す競争力の源泉についての気づきを与え、選択と集中を促すなど、財務的な健全性を保つための方策を共に考えることだといえるでしょう。産業構造が変わりゆくなか、新しい波に乗り、収益構造を作り上げるためのサポートを行いたいところです。