2015年7月6日
税理士業界の趨勢として最近頻繁に語られるようになった事務所の大型化。税理士法人制度の導入も手伝い、その傾向は顕著なものとなってきました。今回は、日税連が全登録税理士・税理士法人を対象に平成26年に実施、このほど結果が公表された「第6回税理士実態調査」の中から、税理士事務所の規模にまつわるデータをみていきます。
調査で、まず注目したのは税理士の関与する顧客の件数です。調査対象となった平成25年中の国税の「税務書類作成・税務代理」の平均関与件数は134.4件でした。前回平成16年の調査では98.8件であり、大幅に増加しています。また「税務相談・その他」の平均関与件数は26.8件。これも、16.1件から大きく増えました。
地方税の平均関与件数も同様に増加しています。「税務書類作成・税務代理」は66.8件から80.0件、税務相談・その他」は14.7件から19.3件となり、税理士のすべての業務において平均関与先が増加している状況だといえます。
単位会別にみると、国税の「税務書類作成・税務代理」の平均関与件数が最も多い単位会は、沖縄税理士会の219.1件。北海道税理士会の195.5件、南九州税理士会186.5件が続きます。
一方、最も平均関与件数が少ないのが東京税理士会で、100.8件、千葉県税理士会が107.0件、近畿税理士会が109.9件、名古屋税理士会が114.1件と続きます。都市圏の税理士事務所では、税理士間の顧客獲得競争が激しい状況も見て取ることができます。
関与先の増加、事務所の大型化の要因のひとつに、平成14年4月施行の改正税理士法により創設された税理士法人制度があることは間違いありません。制度のスタートから2年程度で行われた前回調査時点では、全国の税理士法人数は619でしたが、今回の調査では、2,688と、4倍以上に増加しています。
事務所の大型化を示すもうひとつの数字として、開業税理士の割合があります。
今回の調査対象となった税理士登録者は、前回調査の67,368人から77,007人と、約14.3%増加しています。そのうち開業税理士および税理士法人の社員税理士の合計は、63,516人から59,250人に減少しています。前回調査時は、補助税理士や社員税理士の制度が変化した時期であるため、単純比較は難しいものの、この10年間で開業税理士よりも勤務税理士が大幅に増えたと推測できます。
税理士事務所の法人化、大型化が進む中、勤務税理士として活動する税理士もキャリアアップのための戦略が必要です。勤務税理士が増加する中、人材市場においては、ほかの税理士に負けない自らの強みを持つことが求められます。
また、特に都市圏では、事務所間の競争も激化しています。大型法人だけではなく、中小事務所が大事務所との差別化のために、チャレンジングな業務に乗り出す動きがあることも見逃せません。就職・転職を検討する際は、事務所の事業展開や発展性を、当事者として考え高い意識を持つことが必要であるといえるでしょう。