2014年8月8日
中小企業、工場などでは、有価証券報告書等による決算報告の必要がなく、また法人税申告書が融資申請、
取引先への開示等でも幅広く使われていることもあり、「会計イコール一般税務会計」というイメージがあります。
実際に、中小企業を主な顧客とする税理士にもその認識が強いといえるでしょう。
ですが、最近では税理士にも財務・管理会計に関する知識が幅広く求められることが増えています。
本日は、税理士と財務・管理会計の関係性に関して考えてみたいと思います。
税理士は税法の専門家であり、毎年の税制改正も詳しく学習しています。
これは競争力となる税理士の強みであることは間違いありません。
しかし、会計のうち税務会計はごく一部です。IFRSの強制適用の問題等、会計基準のコンバージェンスの議論からもわかるように、
信頼性の高い開示を行うための財務諸表の整備が世界的な課題となっています。
中小企業においても、会計参与設置会社を想定して策定される中小企業会計指針、より小規模な事業者に適合した中小要領等、
財務諸表を作成する際の基準の整備が進められています。
税理士から一定の基準による決算書の作成支援を受けた企業に対して、融資の優遇を行う金融機関もあります。
また、経済のグローバル化に伴い、今後中小企業であっても海外取引、海外での資金調達を行う機会が増えていくでしょう。
その際は、税理士業務として、国内だけではなく国際的に財務の信頼性を担保することのできる財務諸表を整備することが求められていくものと思われます。
財務会計だけではなく、管理会計の知識も重要です。
経営判断による意思決定、業績の評価を行うために適時に財務資料を作成し、コンサルティングを行うことも税理士に期待される役割です。
税額計算のためだけではない会計知識があることで、税理士の業務の幅は大きく広がることになります。
税理士としての自分の価値を高めるためには、IFRSの適用状況を含め、大企業・中小企業の会計基準の議論に注目し、
それぞれの基準にどのような特徴があるのか、という知識を整理する必要があります。
そして、各会計基準から日本の税法に基づく税務調整がどのように行われるのか、ということもあわせて学び、
総合的に会計知識を深めておくべきでしょう。
会計事務所・税理士法人の業務には幅があります。
そして、税理士の活躍のフィールドも、一般企業を含めて広がりを見せています。
転職の際に必要なことは、転職先の会計事務所あるいは一般企業が必要としている「会計」とは何を意味しているのか、
ということを見極める視点です。
税務の知識の深さをアピールすることはもちろん、国税当局以外の機関への財務状況の開示、
そして管理会計による経営判断等、信頼性の高い決算書が企業にもたらすメリットに意識的であることが求められているといえます。