2017年1月23日
相続税の基礎控除額の引き下げによる課税ベース拡大で納税者が大幅に増加したことは、税理士にとって大きな変化。そしてそれは、国税当局にとっても重要な変化です。国税当局は現在、見込み納税者に相続税の申告案内や周知文を送付する業務に力を入れています。相続人の方々が、こういった通知を受けたことをきっかけに税理士に相談するケースも増えているようです。
国税当局では、相続税が課税される可能性のある一定の要件を満たす者に周知するため、相続人に「相続税の申告案内」を送付。そして、「相続税の申告要否検討表」により、相続税の課税義務があるかどうか、自ら判断するように促しています。
市区町村は、住民が亡くなると、法律上税務署に通知しなくてはなりません。税務署は、亡くなった方の所得税等の申告書のデータから課税の可能性を判断、申告期限の4か月前くらいに、上記の案内を送付しているようです。
相続税の課税ベース拡大にともない、見込み納税者が大幅に増えることとなり、このような通知の取り組みに力が入れられています。報道によると、一部の国税局では、相続税の申告期限の3か月前に、さらに「相続税の周知文」を送付する取り組みを行っているようです。また、財産の内容や価額により申告の必要があるか否かが簡単に判断できる「相続税の申告要否判定コーナー」も国税庁WEBページに開設されるなど、新しい試みも始まっています。
相続税は、高い確率で税務調査があることで知られる税目ですが、相続税で懸念されるのが、無申告の急増です。無申告は、申告書の内容についての調査よりも着手が難しく、増加すると税務行政が円滑に進みません。納税者に自ら申告してもらうための取り組みには、今後も様々な方法で力を入れていくものと考えられます。
この通知文は、税実務に直接関連するものではないものの、税理士としてはどのような書類がいつ届くのかを知っておきたいものです。というのも、普段税理士へ依頼したことのない人が、このような通知を受けて戸惑うケースがあるからです。税理士の社会的使命として、スムーズに申告ができるよう助言したいところです。
また、そのような使命としてだけでなく、課税ベース拡大により新たに納税者になる厚い層に対するマーケティングの観点からも重要です。通知があった場合にどのようにすればよいか、といったアプローチで、見込み顧客を獲得することも考えられます。国税庁が用意するWEBページの判定コーナーの使い方を解説しながら、相談業務を行うこともできるでしょう。国税当局の取り組みを活用し、顧客獲得につなげる方法を考えてみてはいかがでしょうか。