2015年5月22日
パソコン用会計ソフトの普及は、会社の経理業務、そして税理士業務を大きく変えました。 自計化、記帳代行業務の低価格化等が進んだことで、会計事務所が顧問先に提供するサービスの見直しが行われることとなりました。 そして最近、会計業界にさらなる変革をもたらすものとして話題をさらっているのが、クラウド会計ソフトです。
パソコン用会計ソフトの基本となる、仕訳を行うだけで総勘定元帳や試算表等を作成する機能は、普及当初から非常に完成度の高いものでした。
クラウド会計はこの会計ソフトの機能に久しぶりに大きな変化をもたらすものです。
クラウド技術を利用した会計ソフトには、以前からASP、SaaS型ソフトがありました。
データベースへのアクセスのしやすさ、拠点間のネットワークに関する利便性から、大企業を中心に導入が進んでいましたが、
現在大きな話題になっているのは、クラウド会計の自動仕訳機能。これは、会計実務そのものを変えるイノベーションといってよいものです。
クラウド会計では、ネットバンクやクレジットカード等の電子データと連携し、これらの取引を利用しただけで仕訳が作成されます。
そのほか、電子マネーとの連携なども追加され、各種の経費の記帳が網羅されつつあります。
この機能が確立すれば、領収書から経費を仕訳する従来の会計実務のほとんどが不要となることも考えられます。
この新しい技術は、従来の老舗のパッケージ会計ソフトのベンダーも注目することとなり、追加オプションとしての提供が始まっています。
パソコン用会計ソフトは、会計人の「特殊技能」としての会計記帳のイメージを変えましたが、
ソフト使用でも最低限必要であった仕訳をも省略するクラウド会計は、その観点からひとつの完成形ともいえ、税理士業務への影響は避けられないでしょう。
一般的にも企業が行うクレジットカードやネットバンクによる取引自体を税理士が行うことはないでしょうから、仕訳そのものを「代行」することも難しくなります。
記帳代行業務のさらなる価格低下につながることも考えられます。
しかし、クラウド会計の導入にはハードルもあります。仕訳が自動化されても、事後的に勘定科目を調整することはどうしても必要です。
何度も登場する取引の勘定科目をソフトに記憶させるなどといった方法で利便性を高めるためにも、導入の際、必ず税理士の専門的な知見が必要です。
クラウド会計ソフトのベンダーは、従来のパソコン用会計ソフトと同様、中小企業と多くのつながりを持つ税理士との連携に動き出しています。
ベンダーにとって税理士は普及の成否を分ける重要な存在であり、個々の税理士としても関わり方を考える必要があるでしょう。
クラウド会計ソフトの普及がある程度進んだあとも、税理士には大きな業務のチャンスがあります。
というのも、現在クラウド会計のメリットが強調されているのが、大企業とは異なってすべての取引の仕訳を自動化できる可能性が高く、
導入メリットの高い比較的小規模な事業者であるからです。
今後、機能がブラッシュアップされ、大企業においても利用価値が高まっていけば、すべての業種・業態においてクラウド会計ソフトが影響力を持つことになります。
クラウド会計の導入支援に、早めの対応をした税理士が、今後のビジネスチャンスを掴むことになることも考えられるでしょう。