2015年8月13日
最近、税務当局の動きとして話題となっているのが、富裕層のうち、とくに所得・財産の高い「超富裕層」への課税、調査への注力。この動きは、税理士業務にも大きな影響を及ぼすと考えられます。超富裕層に関する法制や行政の取り組み等について、最近の動きを見ていきましょう。
税制における「超富裕層シフト」としてまず挙げられるのが、法人税減税の流れのなかでの、所得税と相続税の最高税率の引き上げ。所得税(所得金額4,000万円超)が40%から45%へ、相続税(相続額6億円超)は50%から55%へ引き上げられました。
所得の捕捉、財産の把握については、マイナンバーが重要です。金融機関の口座とのひも付けが行われる見通しであり、所得、資産の捕捉が進むはずです。とくに超富裕層の顕著な行動であるキャピタルフライトの捕捉のため、国外財産調書も導入されました。
そして、国外財産について、今年7月に導入されたのが出国税。国内に5年以上居住していた人が海外に移住する場合、株式や投資信託などの有価証券、金融資産の含み益が合計1億円以上ある人に課税する制度です。最高裁でも争われた国内の、居住者、非居住者の扱いを利用したいわゆる「パーマネント・トラベラー」の節税にもメスが入れられることになります。
法制度だけではなく、行政も超富裕層シフトを敷いています。現在国税当局では、東京国税局・名古屋国税局・大阪国税局に資産規模がとくに大きい超富裕層向けのプロジェクトチームを設置。税務専門誌の報道によると、先日行われた全国国税局課税部長会議では、今年度に、超富裕層の選定基準等の指針を通達として示す方針が確認されました。
今後、行政通達までを含めた広義の税制、税務調査において、超富裕層をターゲットとしたものが増えていくことが予測されます。超富裕層に特徴的な種々の節税策について、調査を強化したり、行政通達で縛りをかけたりする動きが出てくる可能性もあるでしょう。
現在、相続税増税への注目の高まりから、資産税に力を入れる税理士が増えています。その中で、とくに超富裕層に関与する税理士に求められるのは、高所得者・資産家の、フローとストック双方を総合的に見てタックスプランを行うこと。
法人税・所得税と資産税等の担当者が連携しながら、国内財産、国外財産の所在も把握し、いわば税理士もプロジェクトチームを組んで一人の顧客に関する業務を行う必要があります。そのような仕事は、勤務税理士として、視野を大きく広げるステップアップのきっかけとなることは間違いありません。