2015年6月11日
経済のグローバル化、多国籍企業の全世界的な活動にかかる課税上の問題に対応するため、経済協力開発機構(OECD)とG20 が中心となり、「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」が本格化しています。税理士・会計士が行う国際税務にも多分に影響することが考えられるため、議論の行方に注意を払う必要があります。
OECDが策定する、国際連携による租税回避策は、15の「BEPS行動計画」としてまとめられています。2014年9月にはそのうち7つの内容を発表し、2015年に行動計画の全容が明らかになる予定です。
「BEPS行動計画」は以下のようにまとめられています 。
行動1 電子商取引課税
行動2 ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の否認
行動3 外国子会社合算税制(CFC税制)の強化
行動4 利子等の損金算入を通じた税源浸食の制限
行動5 有害税制への対抗
行動6 租税条約濫用の防止
行動7 恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止
行動8 移転価格税制(無形資産)
行動9 移転価格税制(リスクと資本)
行動10 移転価格税制(他の租税回避の可能性が高い取引)
行動11 BEPS の規模や経済的効果の指標の集約・分析
行動12 タックス・プランニングの報告義務
行動13 移転価格関連の文書化の再検討
行動14 相互協議の効果的実施
行動15 多国間協定の開発
OECD加盟各国は、計画に基づき、税制による対応を進めています。日本では、平成27年度の税制改正で、提言に対応したいくつかの税制が導入されています。
たとえば、国境を越えた役務提供に対して、国外基準の見直しやリバースチャージ方式など課税方式の導入などを行いました。これは行動計画1「電子商取引課税」への対応であると考えられます。
また、行動計画2では、「ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の否認」が掲げられています。ハイブリッド・ミスマッチとは二国間の税制の違いにより、両国の課税を回避する手法。平成27年度税制改正では、海外子会社の配当が現地国で非課税である場合に、親会社の外国子会社配当益金不算入制度の対象外とするなどが、この問題に対処しています。
そして、行動計画6「租税条約濫用の防止」への対応として、キャピタルゲインへの課税について、非課税となる特例が創設されている国へ転出する際に、合計評価額が1億円以上の有価証券等を所有している場合は、所得税の確定申告が必要とされました。
今後も、行動計画に対応して国内の税制が改正される動きが続くものと考えられます。2015年に15の行動計画の指針が出そろい、計画に基づいた税制が整備されることとなるため、今後数年は、国際税務の大枠が決まる重要な時期であるといえます。
税理士が顧問先に提供するタックス・プランニングでは、現在の税制だけではなく、将来起こるべき変化に注目することが必要です。そして国際業務においては、BEPS行動計画による多国間の協調が、今後の展開に多大な影響を及ぼすことになるでしょう。現行の税制のうち何が問題になり得るのか、今後の行方を見定めるために確認しておく必要がありそうです。