2014年9月22日
相続税の課税対象拡大等から、個人資産家向けの税理士業務の注目度が増していることはご存じだと思います。それに加え最近は、家計・資産管理に関して、税務以外の相談に幅広く対応する個人向けFP業務を手がける事務所が増えています。
FPの主な業務として、金融資産運用、ローンに関する相談、保険・年金などの保障に関する相談、相続・事業承継に関するコンサルティングなどがあります。
FP業務でよく使われる用語に「ライフプラン」があります。個人のライフプランは、家計に関する総合的な知識をもち、それらを関連付けることではじめてみえてくるもの。文字通り人生の計画すべてに携わることになりますので、相続時などのスポット契約ではなく、長期的な業務獲得が望めます。
個人向けFPの業務を提供する税理士にお話を伺うと、参入当初期待していた資産家のほかに、一般のサラリーマン家庭からの依頼が意外と多かった、という声も聞きました。サラリーマン世帯の収入・支出を企業の財務諸表に近い形で提示する、という業務が好評を博し、セミナー講師などの依頼も増えているようです。
他の事業者の動きも気になるところです。公的年金・保険について強みを持つ、社会保険労務士がFP業務に参入しています。また、民間保険会社の募集人が行う保障額シミュレーション、銀行員が住宅ローンに関して行う返済計画等、実質的にFP業務を代替している事業者が存在します。その中で、税理士は、会計についての強みを生かしながら、独立した立場で相談業務を行うことのできる職業といえます。
税理士にとって、資産運用、生命保険、相続に関する税務については主要業務ですから、対応は容易でしょう。しかし、それだけでは個人のニーズをカバーできるとは言い難い部分もあります。
税理士に乏しい知識として挙げられるのは、年金や金融商品に関する知識です。とくに勤務税理士は、社会保険が給与から天引きされているため、公的保障の内容、費用に関して意識していないことも多いはずです。また、収入を金融商品で運用した経験がない人も多いでしょう。課税に関しての知識はあっても、個別商品の特質・リスクなどを意識的に学習しておく必要があります。
個人FP業務を行う事務所への転職活動の際は、FPが総合的な知識を必要とすることから、個々のスキルについてアピールがしにくいという面もあります。所得税・資産税業務の経験のほか、知識を示すためにファイナンシャルプランナー資格を取得することも選択肢の一つになります。
また、FPは、個人からの信頼を得て、生活全般に根差し長く付き合うタイプの業務のため、コミュニケーション能力も問われます。一般的なユーザーの方に総合的な情報を提供することで、あたらしく顧客になってくれる場合も考えられます。
税務相談業務、顧問先への訪問・提案の実績、リテール業務など消費者と直接関わった経験がある場合も、確実にアピールしておきたいところです。