2015年7月2日
日本税理士会連合会(日税連)が、税理士・税理士法人合計77,007件(有効回答数33,767件)を対象に実施した「第6回税理士実態調査」。今回、調査結果の中から注目するのが、税理士業界の脅威としてしばしば語られる「顧問料の低落」について。前回平成16年(2004年)の調査結果も交えて、実情を分析していきましょう。
今回調査の、法人月額顧問報酬の結果は以下の通りです。
1万円以下 | 7.7% |
1万円超3万円以下 | 52.5% |
3万円超5万円以下 | 27.7% |
5万円超7万円以下 | 5.6% |
7万円超10万円以下 | 4.0% |
10万円超20万円以下 | 1.6% |
20万円超30万円以下 | 0.4% |
30万円超 | 0.5% |
1万円以下 | 6.1% |
1万円超2万円以下 | 17.6% |
2万円超3万円以下 | 32.0% |
3万円超4万円以下 | 17.9% |
4万円超5万円以下 | 14.7% |
5万円超7万円以下 | 5.8% |
7万円超10万円以下 | 3.9% |
10万円超15万円以下 | 1.2% |
15万円超 | 0.1% |
5万円超の報酬を受ける割合はそれほど下がってはいないものの、中小企業を対象とする顧問料として一般的な価格帯である「3万円超5万円以下」(前回調査では、3万円超4万円以下と4万円超5万円以下の合計)の割合が、32.6%から 27.7%に低落。
そして、顧問料としては低価格帯といえる「1万円超3万円以下」が49.6%から52.5%と、半数を超え、「1万円以下」の割合も増えています。顧問料の下方シフトは明らかだといえるでしょう。
前回調査が行われた平成16年(2000年代初め)の社会状況として挙げられるのは、ブロードバンドの急速な普及等のパソコン環境の向上です。中小企業の会計ソフト使用率も大幅に上がり、税務環境も大きく変化することになりました。
中小企業の間で自計化が進むとともに、記帳代行業務を行う一般事業会社の存在感も大きくなりました。
税理士も若手を中心に低価格での記帳代行業務に参入。ネットによる全国展開、幅広い集客で競争は激化しました。この動きが、顧問料に及ぼした影響は、ほとんどの税理士が肌で感じるところではないでしょうか。
現在の業界の状況をみる限り、PC等の技術変化による顧問料の低落については、下げ止まりの印象があります。
新たな技術として、自動仕訳機能を持ったクラウド会計などもありますが、記帳代行の価格低下の要因となっているとは言い難く、ソフト導入サポート・経理体制構築業務にむしろ需要の発生がみられます。
これからの税理士は、自計化へのハードルが低くなり、低価格化が底を打った現在こそ、記帳以外の「税理士が顧問についていること」のメリットを、いかにアピールするかを考えるべきでしょう。勤務税理士の皆様も、税務会計だけではなく、各種会計基準を用いた財務・管理会計の整備、コンサルティング等に関するスキルアップに研鑽を重ねる必要がありそうです。