2015年5月7日
税理士事務所が、独占業務である法人税務・個人税務とともに行うことの多い業務として、生命保険代理業務があります。一社、あるいは複数の保険会社と代理店契約を行い、主に企業経営者に対し、いわゆる「節税商品」を含む、税務メリットの高い保険商品を推奨し、成約につなげる仕事です。
生命保険会社にとって、企業経営者との豊富なネットワークを持ち、保険に関連する税務ニーズを日常的に聞き取ることができる税理士は重要なビジネスパートナーです。税理士にとっても、保険代理業務は税務と並行して経営者に具体的な提案を行うことができ、かつ保険会社からのフィーを得ることができる業務です。
しかし、保険代理業務は、事務所によって積極的に行うところと、行わないところがあることも特徴です。保険代理業務を行っていない税理士からは、特定の保険会社の「色」がつくことを避けたい、自身の専門である税務に集中したい、といった意見が聞かれます。これらは、会計人の職業観に基づくものであり、考え方に違いが出ることは当然でしょう。
しかし、保険代理業務を行わない税理士も、どのような種類の保険商品があり、税務とどのように関連するのか、という相談自体は、受けたことがある人がほとんど。ここから個別商品の紹介をするか否かが、保険代理業務を行う事務所と行わない事務所の差です。
さて、ここで重要な視点は、保険代理業務を行うか否かにかかわらず、保険会社の保険募集人(外交員)が行う業務には、税理士としてのステップアップを考える上でのヒントが多数ある、ということです。
日本には、個人に向けて、保険を含む資産運用に関してアドバイスをするFPが少ないといわれています。保険外交員は、もちろん自社の保険の加入を促すのが仕事ですが、現実には、加入者のライフプランに応じた資産形成について、幅広く相談に乗る、個人向けFPの役割を担っているのも事実です。
保険会社・外交員が注目するライフイベントとして、結婚や出産、子どもの入学等があります。そして、今後高齢化が加速度的に進むことが予想されることから、相続・事業承継の相談の需要が高まっています。これらのライフイベントと税務が密接にかかわっていることは言うまでもありません。
税務相談は税理士の独占業務のため、保険会社・外交員が行うことには法律上の限界があります。生命保険会社と税理士がパートナーシップを結ぶことにより、外交員のFP業務は補完されることになります。これは、税理士が保険代理業務を行うことで、税理士事務所の個人向けFP業務が確立することも意味します。税理士のスキルアップとして、今後重要性が増していくことが予想されるところです。
勤務税理士にとっても、保険代理業務を行う税理士事務所での業務経験は、税務にプラスアルファするスキルとして貴重です。転職の際も、代理店の業務を行った経験がある場合は、確実にアピールしたいところです。
現在保険代理業務を行う事務所に勤務している場合、その保険会社のひとつひとつの商品について、節税だけではない様々な観点からメリット・デメリットを整理しておくことをおすすめします。保険商品には各社違いはありますが、商品の性格、税務メリットなどには共通点の多い商品が多いため、一社のラインナップを突き詰めて分析することにより、汎用性の高い知識となります。
そして、保険代理業務を行っていない勤務税理士の方も、保険募集人がどのような業務を行っているのか、そしてその業務が税理士との協業によりどのような相乗効果を生み出すのか、ということを学ぶことで、個人向けFP、資産コンサルティングのスキルは格段にアップすることになるでしょう。
税理士の資格を活かせる会計事務所・税理士法人の求人はこちら >>