2015年3月20日
マイナンバーの国民への付与が2015年10月からスタートし、本格的な運用が2016年1月から行われる予定です。 マイナンバーは正式名称の「社会保障・税番号」にも表れるように税務申告に大きくかかわる制度であり、税理士業務にも変化をもたらすことになります。
まず、直接的な影響としては、国税の各種申告書にナンバーの記載が求められることになりますので、
顧問先の申告代理の際、個人番号、法人番号を確認しておかなくてはなりません。
また、源泉徴収や年末調整を行う従業員や、所得控除の対象となるその家族等のマイナンバーの記載も求められることとなります。
顧問先企業との連絡体制を強化し、番号の確認が業務のボトルネックとならないように準備しておく必要があります。
そして、最も大切なことは、個人情報の管理です。従来から顧問先の帳簿データや申告データの管理には気をつけていたと思いますが、
より多くの個人情報と関連が深いマイナンバーの管理では、さらに慎重を期す必要があります。
当然、業務に関連してマイナンバーを管理することになる税理士は、マイナンバーを利用して税や社会保障の申請を行う一般企業と同様に、
個人番号関係事務実施者として扱われ、セキュリティ面で様々な義務が発生することになります。
個人番号関係事務実施者が行うべき実務については、内閣府によりガイドラインが策定されています。その中で最も注目すべき点が、
番号を扱う事業者の安全管理措置の義務です。事務取扱担当者の監督・教育といった人的安全管理措置、
番号を取り扱う区域と管理する区域の明確化などの物理的安全管理措置、アクセス制御やICカードやナンバーキーの利用といった
技術的安全管理措置などがあります。
マイナンバー制度では、従業員の少ない中小事業者には、上記の義務規定が緩和されていますが、
税理士については規模の大小を問わず、義務規定が適用されることになることにも注意が必要です。
税理士としてはマイナンバー運用後、
金融機関口座とを関連付けることによる調査への影響など当局の動きにも注意を払う必要があります。
また、平成29年からは個人別のログインページ「マイ・ポータル」もスタートし、画面上からe-Taxによる申告が可能となることも想定されています。
税務分野におけるマイナンバーの活用がどこまで行われるのか、今後の展開は見逃せません。
この他にも、マイナンバーの導入で現実味を帯びる税制もあります。所得の捕捉をきっかけとした、いわゆる給付付き税額控除の導入、
消費税のインボイス導入などとの関連も指摘されています。マイナンバーがもたらす将来の税務全体への影響は不透明な面もありますが、
まず導入時の業務負担を最小にし、今後の変化に対応できる体制を早めに築く必要があるでしょう。