2015年5月28日
今後の税理士にとって、社会の高齢化により相続・事業承継業務の重要性が高まることは間違いのないところです。
税理士が手掛ける相続関連業務は幅広く、生前贈与相談、相続税対策などの税務はもちろん、高齢資産家が判断能力を失った場合の財産流出などのトラブルを防止するための支援が必要となることがあります。そこで注目されるのが成年後見制度です。
関西圏の税理士の動きとして注目されるのが、近畿税理士会が2014年10月に設置した、「成年後見支援センター」での、税理士による成年後見関連業務の推進があります。
税理士が携わる成年後見業務としては、後見人などへの就任、また後見に関する相談業務があります。後見人には、裁判所から選任される法定後見人のほか、本人に判断能力があるうちに契約する任意後見人があります。
家族が就任することの多い後見人ですが、第三者である専門家が就任する場合に重要な存在がいわゆる「士業」です。財産管理には契約実務が伴いますので、法律の専門家である弁護士や司法書士、また認知症患者などの身辺監護を行う専門家である社会福祉士などが後見人として活躍しています。
最高裁が公表している、平成25年1月から12月までの法定後見人の選任数の統計によると、選任が最も多い士業が司法書士で、7,295件、そして弁護士が5,870件、社会福祉士が3,332件、行政書士が864件となっています。一方、税理士の法定後見人選任件数は81件。ほかの士業と比べて少ない状況にあります。
税理士会では、成年後見制度への積極的な関与のための活動が行われています。日本税理士会連合会(日税連)は平成23年、「日税連成年後見支援センター」を設立。全国の地域ごとに支部の設立を進め、地方支部の連合体としての体制を整えています。
そして、近畿税理士会が2014年10月に設置した成年後見支援センターでは、近畿税理士会館、和歌山税理士会館にて毎週相談会を開催し、電話や面談により、成年後見を必要とする人、またその家族からの相談に応じています。同会では所属税理士に対しても成年後見制度への理解と業務の推進、研修活動などを行っており、業務を後押ししています。
同様の組織は、弁護士や司法書士など、各士業団体でも立ち上げられています。日税連や各税理士会の試みは、成年後見制度における税理士の役割を啓発し、関与を強めていく強い意志を示しているといってよいでしょう。
各士業は後見業務に関するそれぞれの強みを持っています。その中で、税理士は、顧客の財産の状況を詳細にみることができるお金の専門家であること、また顧問契約で経営者らと関わることが多く、事業承継の観点からのアドバイスができることから、他士業にはない関与の仕方が期待できると思います。
成年後見制度の知識、相談業務や後見業務での実務は、相続業務を手掛ける税理士にとって重要なスキルとなっていくものと考えられます。関西方面の税理士の皆様にとっては、今回の近畿税理士会の支援センター設置が、後見制度に関する税理士としての見識を高めるきっかけになってくれるのではないでしょうか。