2017年7月10日
日本の本格的な景気回復のキーとなるのが設備投資。金融緩和により投資需要が発生し、生産性を高める設備投資にお金が回ることが、持続的な成長のためには不可欠です。平成29年度税制改正では、税理士が主に関与する中小企業が利用できる設備投資に関する税の優遇制度が大きく変わっていますので確認しておきましょう。
平成29年度税制改正で拡充が行われた設備投資関連税制として「固定資産税の軽減措置」「中小企業経営強化税制」があります。
固定資産税の軽減措置は、平成28年度改正で創設されたもので、経営力を向上させる設備を新たに購入した場合に、固定資産税を3年間、2分の1に軽減します。また中小企業経営強化税制は、従来の中小企業投資促進税制の上乗せ措置を改組したもので、経営力を向上させる機械設備への投資について、即時償却や税額控除ができる制度です。
今年度の改正では、これら2税制について対象となる機械設備を追加。従来は、どちらかというと製造業を中心とした機械設備が主な対象という印象がありましたが、大型冷蔵庫など飲食業、セルフレジなど小売業、また多くの業種に関連する空調設備や蓄電池などにも対象を広げ、活用できる企業が飛躍的に増えることが予想されます。
そして、設備投資関連税制として今改正で新しく創設されたのが、「地域未来投資促進税制」です。同税制は、新法として制定される地域未来投資促進法で認定された、一定地域で事業を営む「地域中核企業」の機械装置や器具備品、建物等について、特別償却や税額控除ができる制度です。
従来の設備投資税制は、国の法律で規定するものであるだけに、対象となる設備等が画一的になりがちだといわれていました。新制度は、AIやビッグデータ、バイオ技術、先進的農業技術、教育事業等、地域の特質を活かしながら生まれる新事業を後押しする制度といえるでしょう。
経済の重点施策として拡充の傾向が顕著な設備投資税制。税理士業務への影響も少なくありません。固定資産税の軽減措置と中小企業経営強化税制については、利用できる企業が大幅に増えることが予想されることから、税理士業務への需要が増すことが確実です。また、地域未来投資促進税制では、地域により異なる設備について適用されることとなり、立地する地域の実情に通じた税理士が求められることになるでしょう。
今回の改正も踏まえ、新規の設備投資を検討する顧問先に、適合する制度があるかどうかアドバイスすることが大切であることは言うまでもありません。また、大きな設備投資ではキャッシュフローの適切な計算に基づく投資判断が重要となりますので、会計実務をバックボーンとした中小企業の財務コンサルティング業務も期待されるところです。