2015年5月28日
グローバル企業による、インターネットを利用した国際間取引への消費税課税が税務当局で大きな課題となる中、 平成27年度税制改正において、役務提供に関する国際間取引への消費税課税方式が改正されました。 特に、新しい課税方式である「リバースチャージ」が採用されたことが実務に大きな影響を及ぼすことが予想されます。
海外の居住者が日本国内で物品やサービスを購入し、海外で消費する場合、原則として消費税は免税となります。
しかし、インターネットで音楽コンテンツや電子書籍を買った場合は、最終消費者となる顧客がどこにいるかがわかりません。
従来はこういった場合「役務の提供を行う者の事務所等の所在地」を消費地と判断していました。
そのため、消費者が国内にいる場合であっても課税されないこととなり、同様の事業を行う国内事業者との価格差が生まれていました。
改正ではまず、こういったB to C取引の場合、国外判定基準を「役務の提供を受ける者の住所・居所又は本店・主たる事務所の所在地」に変更し、
国外企業に消費税の納税義務を課しました。
そして、新しい制度が創設されるのが、納税義務がより複雑になる国外事業者とのB to B取引です。
今回導入されるリバースチャージ方式とは、納税義務者を事業者間の役務の提供者の事務所の所在地から、受けるものの所在地に変更するものです。
つまり、国外事業者からインターネットを通じて役務の提供を受けた国内事業者は、消費税分を差し引いたうえで、
残りの金額を国外事業者に支払い、預り金となる消費税を納付することになります。支払った消費税を仕入税額控除とするとともに、
自ら納付するという新しい税務が発生します。
税理士への影響としては、まずB to C取引においては、海外事業者が新しい判定基準により日本の消費税の納付義務者となることによる、
日本の税法に基づく税務申告業務が増加するでしょう。国外事業者の日本での税務を担当する「納税管理人」の選任も広く行われ、就任のための実務が発生することが考えられます。
そしてB to Bについては、国内事業者の間で、新しい税務に対応し、仕訳や納付税額の把握を確実に行うための会計実務支援、会計ソフトの設定などの需要が発生することになるでしょう。
事業者の混乱が起こることも予想されるため、税理士の情報提供が非常に重要となります。
税理士の活躍のフィールドとして、国際税務が注目されて久しくたちます。国際税務は外国の税法を知り、
海外展開する国内事業者に情報と実務を提供するだけでなく、日本の税制が国外でどのように適用されるのか、という視点も大切です。
これは日本の国家資格である税理士にこそ期待される分野でもあります。日本の税法、行政の文書を読み込み、実務を研鑽するという、
国内業務で普段から行っていることが、とりもなおさず国際税務に直結することになります。
リバースチャージ方式等の新制度は、自らのスキルアップのために国際税務について興味のある税理士にとっては、確実に押さえておきたい税制といえるでしょう。