2014年12月22日
納税者が課税処分に不服がある場合、異議申立や審査請求などの方法で不服申立を行うことができます。
そして、税理士は申立の代理人として就任できます。不服申立代理業務を実務として経験したことのある税理士は多いとは言えませんが、
このほど制度が改正され、代理業務に新たな展開が期待されています。
平成26年度税制改正で、行政不服審査法の改正に伴う国税不服申立制度の見直しが行われました。
国税不服申立の大きな特徴だった「異議申立前置」を廃止し、審査請求を直接請求できるようになったことが大きな改正点です(従来の異議申立は、「再調査の請求」となります)。
代理人となる税理士は、不服申立の際にまず再調査の請求と審査請求のどちらにするかを考えることになります。
課税当局へ行う再調査の請求は、行政のミスを指摘するという面が強く、一方審査請求は国税不服審判所という第三者機関が採決を行うもので、
法律論を戦わせる場という面が強くなります。
不服申立の代理人を手がける税理士からは、前置主義の見直しを歓迎する声が聞かれます。
ある法人代表税理士は「そもそも異議申立で主張が認められることが少ない。最初から審査請求できるなら、従来時間がかかりすぎだ。
顧問先企業が諦めてしまう事案でも申立ができるのではないか」と語っていました。
国税不服審判所への審査請求の数は年間3000件程度ありますが、納税者の主張が一部でも認容されるのは10%前後。
制度改正により、この数字がどのように変化するのかは興味深いところです。
審査請求の代理人に就任すると、「点の打ち方一つで意味が変わる」とも言われる法令の読み込みを行うこととなり、
弁護士業務に近いスキルの研鑽が必要となります。
審判所での審議の進み方、審査請求の際どのような書類を整備し、どのように弁論すればよいのか等、代理人経験のある税理士や弁護士からの情報を集め、
判例、審判所採決事例なども絶えずチェックしておきたいものです。
判例は要旨だけではなく、要旨に取り上げられなかった当事者の主張までをじっくりと読むと、
行政との法的紛争がどのように「解決」に導かれているのか新たな気づきがあるはずです。
審査請求に注目が集まると、代理人を経験した税理士への評価も高まります。
これは税務訴訟を手がける弁護士事務所の求人の際に大きなアピールポイントとなります。
税理士の「法律家」としての見識が問われる不服申立制度に関して、改めて注目する価値はありそうです。