2016年5月19日
平成28年度税制改正では、消費税軽減税率やインボイス制度等、様々な重要な改正事項が盛り込まれています。税理士・経営者の間では、すでに実務や経営への影響について詳細な検討がなされていますが、今回あえて注目するのは、要綱に盛り込まれなかったものの、今後の「検討事項」とされた制度です。税理士への影響が強いと思われるものを中心に紹介します。
税制改正大綱では、今後の検討事項として14項目が挙げられています。その中で、中小企業を顧問先とする税理士としてまず気になるのが、「小規模企業等に係る税制」の部分です。
具体的には、個人事業が法人成りする場合の課税関係について、法人税と所得税の課税のバランスを総合的に検討する、とされています。法人成りによる節税については、税制調査会等の議論でも何度か俎上に載せられており、今後、役員の給与所得控除などのメリットが縮小されることとなれば、設立支援を行う税理士業務に大きな影響があるでしょう。
所得税ではほかに、寡婦控除等控除のあり方についても今後の課題として挙げられています。これまでも、配偶者控除の「103万円の壁」問題など、家族のあり方を含めた議論が行われていますが、今後大きな変更が行われる可能性が高い税制といえるでしょう。
相続・事業承継では、個人事業者の事業承継に関する、承継の円滑化を支援するための枠組みについて触れています。個人事業主は事業承継の際、事業用資産と個人資産を分けることが難しく、税制上の後押しがどのようになされるのか、今後の議論が注目されます。
また、中小企業の承継で必要となる取引相場のない株式の評価については、「相続税法の時価主義の下で、比較対象となる上場会社の株価並びに配当、利益及び純資産という比準要素の適切なあり方について早急に総合的な検討を行う」とされています。
今回は、ごく一部の紹介となりましたが、検討事項にはそのほかにも、酒税法の税率区分の問題や、農業や医療、原料用石油製品、電気供給業、ガス供給業、保険業等の課税のあり方など、税理士として関与する企業の業種によって極めて大きく影響があるものが多数あります。一読しておき、今後の税制改正の方向性を理解し、顧問先への影響を考えておくのは無駄ではないでしょう。