2016年8月22日
消費税の10%への再増税の議論はいまだ不透明な状態。増税がいつ実施されるのかについてはわからない部分も多いですが、いずれにせよ準備しておかなくてはならないのが増税と同時に実施される予定である軽減税率制度への対応。国税庁は、制度開始に先立ち「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」を作成、様々な実務に関する疑問について回答しています。
軽減税率が導入されると、通常の税率と食品等に適用される軽減税率を区分経理した上で申告等を行う必要性が生じます。そこで最も不安視されているのが、軽減税率の対象・非対象の「線引き」の問題です。
国税庁はQ&Aで、判断に迷う具体的な個別事例を示し、線引きの問題について解説しています。商品の例をいくつか挙げると、軽減税率の対象とならないものとして種苗、水道水、飼料やペットフード、酒などがあります。逆に、酒を原料とする菓子、日本酒の原料として販売される米、食品添加物などは軽減税率の対象。また、栄養ドリンクのように、医薬品(対象外)、医薬部外品等(対象)と、ほかの法律による分類が判断基準となる場合もあります。
制度に関する議論で、外国のケースも引き合いに出しながら議論となったのが、いわゆるファストフードなどの「テイクアウト」の取り扱い。対象外となる外食などの「食事の提供」と、対象となる「持ち帰り」のボーダーラインがあいまいになることが予想されます。これについてQ&Aでは、その取引が「食事の提供」なのか「持ち帰り」なのかについて、客に「意思確認するなどの方法により判定」するとしています。
なお、この「意思確認」については、コンビニエンスストアのイートイン等、ほとんどの客が持ち帰りを行う業態で、全ての顧客に口頭での意思確認をするのが困難な場合「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」等の掲示をして意思確認を行うなどの方法でもよいとされています。
Q&Aでは、ほかにレシートの記載内容やレジシステムの改修、免税事業者の注意点など、多くの重要事項に触れています。制度がスタートすると実務上まだまだ不明点は出てきそうですが、今回、当局からはじめてまとまった形で実務に関する情報提供がなされたことは重要です。Q&Aは、税理士も折に触れて確認する資料になると思われます。
軽減税率の実務について、とくに中小企業は不安を持っています。実務に関するアドバイスを行う最も重要な役割を果たすのが税理士であることは論をまちません。増税の議論がどのように進んでも対応できるよう、顧問先の業種に起こり得る問題を想定しながら、研鑽を行いたいものです。