2016年5月2日
競争が激しく、淘汰が進んでいる業種では、とくに小規模事業者の間で税理士による経営コンサルティングの需要が高まります。今回は、そのような状況にある業種の一つとして、歯科医院を取り上げます。歯科業界を取り巻く状況を概観しながら、歯科医院における税務の特徴、経営コンサルティングのポイントを考えてみましょう。
歯科業界の現状としてよく語られるのが、医学教育制度等を要因とした、歯科医、医院の増加。厚生労働省が実施した「平成26年医療施設調査」によると、全国の歯科診療所は 68,592 施設。これは、5万~6万店といわれるコンビニエンスストアを上回る数字です。
しかし、増加傾向にあった歯科医院にも、淘汰の波が訪れています。同調査では、歯科診療所が1年で109 施設減少していることも示されています。業界内では、過当競争のほか、診療報酬のマイナス改定、予防医学の普及による虫歯の減少などによる業績悪化がその要因として語られています。また、人口減少などもあり、今後も淘汰傾向が進むとの予測がなされています。
歯科医院の税務の注意点としては、保険収入の収入計上時期のずれ、自費診療やケア用品の販売、金や銀、パラジウムなど金属の売却などの収入の申告漏れを税務当局から指摘されることが多くあります。また技工における仕掛品や棚卸などでも間違えやすいポイントがあるため、税理士の的確なアドバイスが必要です。
そして、業界の状況から現在強く求められているのが、税務だけにとどまらない経営支援。資金繰りや、診療報酬改定に合わせたアドバイス、高齢化に伴う訪問診療といった新規事業に関する助言、歯科衛生士などの人事関連、ホームページ等による集客ノウハウへの需要も高いようです。これらのスキルを持った税理士も多く活躍しています。
最近では、歯科を得意分野とする税理士が増えたことから、歯科医の間では開業の時から税理士に幅広い相談を行い、助言を受けるケースが増えているといわれます。税理士としては、その期待にこたえられるようなスキルを身につけたいところです。専門分野の知識を得ることは一朝一夕にできることではありませんが、歯科医院の会計の特質のほか、保険制度や医療に関する業法、業界でよく話題になるトピックを最低限知っているだけでも信頼は厚くなるでしょう。歯科関係の業界紙、歯科医経営の実務書などに目を通すなどの方法で研鑽してみるとよいでしょう。