2016年9月26日
日本経済の底上げのため、重要性が高まっている中小企業政策。7月、中小事業者の事業分野別に指針を策定し、条件を満たした企業に各種支援を行う「中小企業等経営強化法」が施行されました。同法について、中小企業を顧問先とし、税務や資金繰りなどのサポートを行う税理士は何に注目すればよいのか考えてみましょう。
同法は、労働人口減少やグローバル化など経済社会の変化への対応が迫られる中小事業者の経営強化を図るためのもの。中核となる制度は、省庁による「事業分野別指針」の策定と、税軽減や金融支援等の特例措置の2つです。
事業分野別指針は、経営力向上のために行われる顧客データの分析、ITの活用、財務管理の高度化、人材育成等の取り組みについて所管官庁の主務大臣が策定。製造、卸・小売、外食・中食、宿泊、医療、介護、保育、貨物自動車運送業船舶、自動車整備等、様々な分野別に策定されます。事業者は各指針に基づき、経営力を向上させるための具体的取り組みを記した「経営力向上計画」を作成して経済産業局等に申請し、認定を受けます。
事業者にとって最も重要なポイントとなるのが、経営力向上計画の認定を受けた場合に得られるメリットでしょう。まず税務では、機械や装置にかかる固定資産税の軽減があります。一定の要件を満たした生産性を高める機械装置を取得した場合、3年間、固定資産税を2分の1に軽減。固定資産税の減税は赤字企業にも効果が期待できるので設備投資を促す効果は高いと言えます。次に、金融支援等の特例措置。政策金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証等により資金繰りがサポートされます。
税理士は昔も今も、中小企業にとって税務はもちろん、資金繰りに関しても最も頼りになる士業者です。そのため、中小企業等経営強化法が運用されるうえでも、税理士は重要な存在となります。経営力向上計画を策定する際、認定経営革新等支援機関の支援を受けられることになっていますが、この認定経営革新等支援機関として、多くの税理士事務所が認定されていることはご存知の方も多いでしょう。
最近の中小企業政策では、税理士が税務だけではなく中小企業の経営改善により深く関与することを促し、その業務に公的なサポートが行われる形態のものが多くなっています。今回の中小企業等経営強化法も、その流れの中にあるものと言えます。各官庁が設定する指針を読み込み、計画策定や認定申請などの方法について学んでおくとよいでしょう。