2016年7月15日
個人事業主やスタートアップ期の会社の事業が軌道に乗り、個人所得が増加した際、税理士が最初にアドバイスする節税のひとつに、小規模企業共済があります。おなじみの存在である同共済ですが、4月より制度内容が一部改正され、拡充が図られました。主な改正点をみていきましょう。
小規模企業共済は、中小経営者にとって退職金の積み立てに位置づけられる公的制度です。国による運営で元本保証がなされ、また全額が所得控除できることから節税効果が高く、手軽に始められるところに魅力があります。
今回の改正では、それらのメリットがさらに高まっています。まず加入時。契約手続きの際、従来申込金として金融機関等に直接支払っていた現金が必要なくなり、手軽さがさらにアップしています。
加入後の魅力は、業績に合わせて掛金を減額、増額できることにあります。この掛金月額の減額の手続きも簡素化されています。従来必要とされていた金融機関等による減額理由の確認が不要となっています。また、加入者が積み立てた掛金の範囲内で低利で貸付けを受けられる制度について限度額の上限が引き上げられています。キャッシュ不足への対応が手厚くなったことで、掛金増額のハードルはさらに下がったといえるでしょう。
そして、退職などがあった場合、事由に応じて積み立てた掛金が払い戻されることになりますが、その『共済事由』の区分けも改正されています。ここで注目すべきは、最近の税制でも大きな流れである、世代間財産移転、事業承継の推進に関係する改正です。
具体的には、「配偶者又は子に事業の全部を譲渡した場合」の共済事由は従来「準共済事由」とされ、事業廃止等と比べ共済金が低い額となっていましたが、4月から、最も金額の高い「A共済事由」に引き上げられています。また、貸付制度でも、廃業のための準備資金を貸付ける「廃業準備貸付け」制度が新設されており、多様な「引退」の形態に合わせた充実が図られています。
そのほか、今回の改正では、共済金分割支給の年4回から6回への増加、加入者の死亡時に共済金を受給できる遺族として、契約者の収入によって生計を維持されていなかった『ひ孫』と『甥・姪』」が追加されるなどの変更が行われています。
小規模企業共済は、中小企業経営者に、安心して勧められる節税策として、税理士業務を行う上での必須知識となっています。それだけに、勧めやすさの理由であるフレキシビリティが増す新制度については、細かいところまで覚えておき、すでに加入している経営者、また新創業の事業者に情報提供しておきたいところです。