2014年3月19日
税理士の増加傾向が著しい税理士業界。平成21年度は登録者数は71,606人、平成24年度では73,725人に増加しています。(日本税理士連合会調べ) 税理士試験合格者数は減少傾向にありますが、税理士試験免除者の税理士登録数が増加しているのが要因です。
一方その間『小規模企業・中小事業者数』は平成21年の420万社から、平成24年には385万社と35万社(約8.3%)も減少しています。 (中小企業庁事業環境部の調査)その後も税理士登録者数は増え続けており、税理士事務所の経営が厳しくなるのは必然と思われます。
そんな厳しいといわれる税理士業界にあって、着実に顧客を増やし、成功している人たちがあります。
「自分のクライアントを増やすとは、誰かの顧客を奪うということではないか」と思う人があるかもしれませんが、そうではありません。
「新しいマーケットを創出し、仕事が集まる仕組みを作る」という事です。
その一つが『アライアンス』です。一番に挙げられるのが『他士業との提携』です。
最近の例では、相続税増税が話題となっているため「相続に関するサービスをワンストップで提供する」として、
税理士が、司法書士、弁護士、不動産鑑定士、保険業者等と提携しています。勿論、これまでも大手税理士法人などでは行われていましたが、
最近は個人で行うケースが増えています。そのきっかけになっているのが、最近増えている『士業懇親会』です。
やる気のある他士業との付き合いから『ベンチャー企業の創業支援』『信託を活用した節税』など、
これまでとは違う形の提携が生まれてきています。
また、もう一つの傾向として『差別化』が挙げられます。
従来の差別化要因は、資産税、相続、事業承継、合併といった、まずはその専門の税理士法人や企業で経験を積むことが
必要になるものが中心でした。しかし、今は個人でも追求できる専門性、差別化要因が多くあります。差別化の前提となる
競争要因が細分化しているためです。
例えば『海外関係の業務』を考えてみます。
筆者の知人に、韓国の税制に精通した税理士がいます。ポイントは、その税理士の顧客は『韓国に進出したい日本企業』ではなく、
『日本に進出したい韓国企業』だという点。
日本企業の海外進出サポートを、すべての国、すべてのレベルで行うのは個人では困難かもしれません。
しかし、顧客を『韓国の企業』と見た時に、別の市場が現れます。韓国企業にとって、自国の税制を理解したうえで
日本での事業サポートをしてもらえる、というのは大きな魅力に映るに違いありません。
また、その税理士は韓国語が堪能ですが、それも「韓国企業と交渉するための武器」ではなく
「クライアントである韓国企業のニーズを的確に把握するための材料」として効果を発揮しています。
外国語のスキルも、視点を変えると別の価値を持っていることが分かります。
フィリピン、ベトナム、インドネシアといった、経済発展が見込まれ、日本進出を狙う現地企業が育つことが期待される新興国でも、
同じようなサービスは十分個人で提供できるのではないでしょうか。
これら『アライアンス』『差別化』は、新規市場を創設する有効な顧客獲得手段になりえますが、注意点もあります。
最も重要な点は「既存顧客を失う危険性がある」という事です。
『アライアンス』においては、例えば、現在すでに複数の弁護士から相続案件がもたらされている場合に、
だれか一人の弁護士と提携することは大きなリスクがあります。
また『差別化』の場合も、その専門性を強調することで、それ以外の顧客からの依頼が得にくくなるリスクがあります。
いずれの場合も、情報とニーズに沿った『自らの立ち位置』をしっかりと意識することが大事になってくるといえます。