2014年10月14日
税理士業界で「自計化」という言葉を知らない方はいないでしょう。 自計化とは、外部に記帳代行を依頼している状態から、自社の経理部門で帳簿付けを行えるようにすること。 税理士には、自計化の体制整備のためにコンサルティングを行う役割が期待されています。 しかし一方で、企業の間では、経理をアウトソーシングする動きも進んでいます。この状況はどう見るべきなのでしょうか。
アウトソーシングの発展には、会計ソフトの発展が影響していることは間違いありません。
クラウド技術の発展もあって、ソフトの機能はより洗練され、安価でサービスを提供する事業者が増えてきました。
しかし、経理アウトソーシングの、月初めに前月の取引にかかる帳票を回収し、一つ一つ記帳行うという基本的な仕組みは変わりません。
税額は期末に最終的に「帳尻」が合っていれば計算することができますが、この方法では、適時な会計ができず、会計を経営に生かしにくくなります。
会計の目的は「過去」の記録をつけ、法定決算や税務申告をするといった財務会計的な目的だけではありません。
税理士が自計化、月次決算を勧めるのは、会計を社内で行う経営分析、意思決定の資料とする「管理会計」を取り入れるためだと言えるでしょう。
しかし、月次決算で税理士が行う仕事は、狭義には、期末に外部開示を目的としてつくる決算書と同様の書類を月ごとに作成すること。
それだけでは管理会計の構築には不十分だと思われます。
たとえば、月次決算が早期にできたとしても、経理部門と事業部門の連携がなく、部門ごと、月ごとの正確な損益が記録されていなければ、管理会計の資料として使えないものとなります。
自計化の支援も、経理担当者に記帳の仕方を教えるだけでは足りません。
期間損益を正確に測ることのできるよう資料の有用性を高めた上で、それをどう使うかを経営者に指導することまでを行う必要があるでしょう。
アウトソーシングの発展・低価格化の状況がある中、管理会計に基づくコンサルティングが伴わない自計化支援の価値は減少していくということになります。
しかし、税理士の中には、管理会計に苦手意識を持つ人が多くいるのが現状です。
たとえば、原価計算を各業種の実態に合わせて行い、意思決定や業績評価について有用な情報を経営者に提供できると自信を持って言える税理士は多くはないのではないでしょうか。
「会社の基本は自計化である」と勧めるためには、適時な会計の本来的な価値、中小企業に未だ定着しているとは言い難い管理会計のメリットをプレゼンできるよう、
税理士が自己研鑽していくことが必要なのだと思います。