2015年1月9日
税理士には顧問先の経営上の問題を発見し、経営改善につながる指導を行うことが期待されます。中小企業でよく発生し、決算書等の数字から発見できる問題のひとつが、未収金の多さです。債権回収を適切に、タイムリーに行うことがキャッシュフロー改善につながります。
税理士の第一義的な役割は所得額、税額を確実に出すことです。売掛等の未収は、貸倒損失の計上時期などの問題はあるものの、直接的に所得への影響はありません。
しかし、経営面から債権回収の重要性を啓発することが顧問先のためにも重要です。売上があってもお金が足りない状況は必ず避け、キャッシュ不足が売掛回収に起因している場合は早めに指摘しなくてはなりません。
キャッシュフローへの危機感は、経営者とスタッフの認識が最も食い違う部分です。現場の社員が当事者意識を持ちにくい中、税理士も課税所得にしか目が向いていなければ、改善の契機を失ってしまうでしょう。
たとえば、売掛金の未収が多い原因を詳細に探った場合によくある事例として、営業社員らには契約を取ることについてはインセンティブがあるものの、未収金回収にはそれがないので積極的にやりたがらず、経理担当者も日々の業務に追われ、誰もコミットする人材がいないというケースです。
税理士はそのような企業に対し、債権管理のためのシステム作りに寄与できます。会計ソフトでは簡易な売掛帳ができますが、経理担当者がその読み方を知らず、活用されていない場合もあるので指導が必要です。また、一歩進んで顧客管理ERPなどを導入すれば、一つ一つの売掛、顧客ごとの債務状況がすぐにわかるような体制を築くこともできます。
システム作りは、電子データの管理だけを指すのではありません。債権を回収するのは最終的には人です。債権額や債務者の与信状況によって、電話による催促、内容証明の送付、支払督促等、段階を踏んで回収手段を講じるルール作りのアドバイスもしておきたいものです。
未収金の増加は、問題点が数字で如実に出ることが多いため、税理士が発見しやすく、専門知識を提供して、会計・経理担当者と連携しながら解決策に取り組みやすい課題です。
月次決算等で発見した問題を指摘し、原因を分析、体制づくりの提案までを行えるようにすることが、税務のみならずコンサルティングができる税理士としてキャリアアップするための第一歩となるのではないでしょうか。