2015年12月3日
業種や事業規模にかかわらず、多くの企業で重要な税務処理の一つとなっているのが減価償却です。特に中小企業では、一括償却など少額資産に関する特例が設けられており、税理士業務で、償却のルールを念頭に設備投資のアドバイスを行うことも多いでしょう。そこで気になるのは現在、その少額減価償却制度に見直しの議論が進んでいることです。
中小企業の減価償却に関する代表的な制度に、資本金1億円以下など一定条件に該当する中小企業者について、取得価額が30万円未満の少額減価償却資産の全額損金算入できる制度があります。
顧問先の年度の利益状況によって、また取得価格の合計額が1事業年度の300万円以内という枠に配慮しながら償却制度の利用を検討、助言したり、明細書の作成を行ったりした経験は、非常に多くの税理士がもっているでしょう。
実はこの少額減価償却制度は、「平成18年4月1日から平成28年3月31日までの間」の取り扱い。今年度でこの特例措置は期限切れを迎えます。これについては懸念の声が多く、省庁による税制改正要望では、総務省が延長を要望しているほか、経営者団体等からも延長の要望が出されています。
現在の税制の大きな流れの一つに、法人税の課税ベース拡大があります。なかでも租税特別措置法による中小企業税制には見直しの動きがあり、存続を求める企業・団体とのせめぎあいが激しくなっている印象があります。
会計検査院は、法人税の軽減税率をはじめとした中小企業減税の不合理を指摘しており、税制調査会からは、いわゆる「法人成りによる節税」にも縛りをかけるべきとの声が聞かれます。有名企業が、減資による「中小企業化」によって節税する動きが批判的に語られたことも記憶に新しいところです。平成27年度は延長された軽減税率をはじめ、中小企業への導入が見送られた外形標準課税など、今後の議論の行方は予断を許しません。
減価償却制度についての改正議論では、大企業にも関連する定率法を廃止し、原則的に定額法に一本化する動きがあります。そして、中小企業の特別償却についても議論の俎上に載せられることが多くなっています。平成28年度改正以降、減価償却制度がどのように整理されていくかはまだまだ不透明ですが、税理士として、改正後に顧問先への情報提供を行うことはもちろん、改正の可能性のある制度については、早めに顧問先への影響を含めて論点整理しておくことが重要です。