2017年6月12日
中小企業の多くは、会社への融資を経営者が連帯保証しています。この状況は、円滑な金融、事業創出、また再チャレンジを阻害するともいわれ、個人保証によらない融資の必要性が叫ばれていますが、理想と現実にはかい離がありました。しかし最近、政府による推進もあり、個人保証を付けない融資が増加傾向、税理士にとっても見逃せないものとなっています。
2016年12月、中小企業庁が発表した、政府系金融機関(商工組合中央金庫、日本政策金融公庫)における、「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績では、個人保証によらない融資の増加傾向が示されています。
政府系金融機関で新規に無保証で融資した件数および金額は、平成26年度 41,860 件、1兆4,801 億円だったものが、平成27年度には52,911件、1兆8,950億円、そして平成28年度は4月~9月までの半年で、36,815 件、1兆4,980と、大きく増えていることがわかります。
新規融資に占める、経営者保証に依存しない融資割合(金額ベース)を見ると、より顕著な数字となります。平成26年度は24% にすぎなかったものが、平成27年度は32% 、平成28年4月~9月は51%と金額の上では半分を超えています。
統計は「経営者保証に関するガイドライン」についての準拠状況を調査するもの。同ガイドラインは、平成26年2月に適用開始。個人保証が思い切った事業展開や、経営危機時の早期再生を妨げるなど、企業の活力を阻害する面があることから、自主的自律的な準則として、策定・公表されたものです。
内容は、個人保証によらない融資を検討すべきとされる諸条件を挙げたうえで、その代替となる手法として、停止条件あるいは解除条件付保証契約やABL、金利の一定の上乗せ等を挙げ、金融機関に「経営者保証の機能を代替する融資手法のメニューの充実を図ること」などを求めています。また、融資する側だけではなく、債務者となる中小企業が守るべき、経営と所有の分離の在り方、経営責任の在り方などを規定しています。
中小企業の資金調達では、間接金融は最重要な存在です。個人保証や担保の大きさではなく、事業の成長性や将来性に与信し、優れたアイデアやビジネスモデルに資金提供が行われる仕組みの確立が望まれるところです。そのためには、金融機関の取り組みとともに、中小企業においては会計の信頼性の確保、稟議が通りやすい申請の仕方をアドバイスすることなど、税理士の役割は大きいでしょう。
税理士は、個人保証のない融資を目指す経営者への支援体制整備、既存の債務の保証外しの申請に対応するなど、ガイドラインの内容を念頭に置いた資金繰り支援業務を身につけておきたいところです。現在、政府系金融機関だけではなく、民間金融機関においても、ガイドラインへの準拠状況を公表しているので、チェックしてみるとよいでしょう。