2017年2月27日
相続財産は現金や有価証券、不動産など様々。中でも主要な財産のひとつに、銀行預金があります。この銀行預金の扱いについて、現在最高裁が遺産分割に関する重要な判例変更を行うと見られており注目されています。裁判の争点や、判例変更後の税理士の相続業務への影響を考えてみましょう。
被相続人の銀行預金について、判例では、預金は「可分債権」であり、法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものとしています。つまり、銀行預金は原則的に、遺産分割協議を行って権利が分割されるのではなく、法定相続分に従って、各相続人が引き出すという扱いです。
しかし今般、被相続人が行った生前贈与を考慮し、預金の遺産分割を行うことを求めた裁判で、2審までは判例通り遺産分割の対象外と判断したものの、最高裁が審理を大法廷に回付。判例を変更するものと考えられ、実務家の注目が高まっています。
従来の判例の扱いは、実態に即していないとの声がありました。判例では、預金についても相続人全員が合意すれば、遺産分割の対象とすることが可能であるとされているため、預金を含めた相続財産全部について遺産分割協議を行うケースが多かったようです。
また金融機関でも、トラブルを避けるため、社内規定で、相続人がそれぞれ預金払い戻しを請求しても、応じてくれないことがほとんどです。その場合、金融機関に提出するため、相続人全員で、同意する書面を作成する必要がありました。判例が変更されると、遺産分割の際に当然に預金を含むことができるようになるため、とくに今回の裁判例のように特別受益がある場合の実務上の手続きが大きく変わることになるでしょう。また、現在議論されている民法改正でも、扱いが明確化されることが考えられます。
相続実務における預金は、死亡後の被相続人の口座の扱いが金融機関ごとに一定ではなく、税務においても難しい存在でした。税理士は直接的に遺産分割の代理人になることはありませんが、預金に関連するトラブルで、相続税申告のプロセスに大きく遅れが出ることも珍しいことではありません。
判例変更により、預金の扱いに関してはある意味で分かりやすくなるともいえますが、遺産分割の対象になれば、預金の分割方法を明確にしておくことがますます重要となります。トラブル防止のため、生前に遺言を作成することについて啓発をすることが大切なのも言うまでもないでしょう。弁護士など法律実務者との連携を行いながら、税理士業務の変化についても確認しておくべきでしょう。