2017年10月17日
消費税の10%への増税が迫り、税理士が顧客とする中小企業では、増税による悪影響への懸念が進んでいます。その懸念の中には、売上減少や価格転嫁の困難のほか、はじめて導入される軽減税率による実務負担の増加もあります。中小企業庁は軽減税率の実務ポイントを解説するパンフレットを制作、スムーズな移行のための周知活動を行っています。
軽減税率は、2019年10月に予定される消費税率10%への引上げに合わせ導入。食品、新聞等に8%の税率が適用されます。消費税の複数税率は初めての試みであり、実務の影響は大きくなることが予想されます。
具体的には、税率ごとに区分した経理、税率を記載した領収書や請求書等の作成、発行、仕入税額の計算等が必要となり、経理事務作業は大幅に増えることになります。
中小企業庁は、必要となる実務に関する周知を徹底。同庁制作の「消費税軽減税率対策に関するパンフレット」では、自社商品の税率の管理の他、仕入先から購入する物品の税率の確認など、税務のポイントを整理しています。
また、税実務そのものだけではなく、商品値付けの際に、適用税率や原価を踏まえて適切な価格をつけることの重要性にも言及し、下請法についても改めて解説。8%への増税後、下請け価格の据え置きなどの問題が多発したこともあり、価格転嫁を適正に行うことの重要性を強調しています。
さらに、2023年からは適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度も導入予定。仕入税額控除の適用要件などの変化、また今後の制度改正のスケジュール等をまとめています。
また、中小企業が注目すべきこととして、複数税率にスムーズに移行するための様々な時限的な制度があります。仕入税率ごとの区分が困難な場合、軽減税率スタート後1年間、仕入れの一定割合を、軽減税率対象品目の仕入れとして税額計算する制度などがあることも紹介しています。
そして、複数税率対応レジの購入費用、受発注システムの改修などを行う場合に経費の一部を補助する「中小企業・小規模事業者等消費税軽減税率対策補助金」など、中小企業者の実務を後押しする制度についてもとりあげています。
今回制作されたパンフレットは、中小事業者向けのものであり、内容は税理士として当然のことといえるかもしれません。しかし中小企業の目から、軽減税率の実務のどこが実務上のネックになり得るのか、改めて確認するうえで有益でしょう。
軽減税率導入までは、予定通りに進んでも2年ほどの時間があります。これから、中小企業の記帳や税務の指導、コンサルティングの業務が必ず発生することになるでしょう。中小企業の経理担当者の不安や困難を知り、サポート業務の在り方を考えてみてはいかがでしょうか。