2015年9月14日
平成27年6月、政府の経済・財政に関する方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」が発表されました。
その中では、「税制の構造改革」として、経済成長を実現しつつ安定的に税収の基盤を構築するため、税制を全体的、総合的に点検する「オーバーホール」を行うとの方針が示されています。
骨太の方針で示されている税制改革を一つずつ見ていきましょう。
まず法人税では、「成長志向の法人税改革」として減税の方針を確認。以前から安倍政権では法人税の実効税率を20%台まで引き下げる方針を示しており、それを確認したものと考えられます。
個人所得課税については、「今後の改革の中心」と位置付け、構造の見直しを行うとしています。とくに強調されているのが「夫婦共働きで子育てをする世帯にとっても、働き方に中立的で、安心して子育てできる」所得課税のあり方です。
具体的には、女性の就労の阻害要因となっているとの指摘もある配偶者控除の見直しのことだと考えられます。配偶者控除は、完全廃止や、問題点とされる「103万円の壁」を廃して、配偶者の所得にかかわらず税額控除が受けられる「夫婦控除」の導入などの案が示されており、今後大きな変化が起こる可能性は高いでしょう。
骨太の方針で大きな課題として取り上げられていることに、税制において、比較的裕福な高齢層と比べ、低所得の若年層への措置が乏しいことがあります。
「年齢ではなく経済力を重視する一方、成長の担い手である若い世代を含む低所得層に対する税制見直しを進める」との考えが示されています。
現在政府税制調査会(税調)では、税・社会保険料を含め、低所得の若年層の負担減の方策について話し合われており、具体的な政策としてどのような改正案が出てくるのか、注目しておく必要がありそうです。
また、高齢層から次世代を担う層への財産の移転も取り上げられています。世代間の財産移転については、教育資金の贈与税非課税制度、ジュニアNISA等、新たな制度が整備されていますが、それらの制度の拡充、新制度導入等、その方針は強化されると予測されます。
税理士の仕事は、現行の税制の内容を深く理解し、税務を行うことです。
しかし、とくに資産税のコンサルティングでは顕著ですが、今後の税制の方向性をつかみ、予測しておくことで、顧問先へのアドバイスの内容が大きく変わることがあります。
骨太の方針をもとに、今後、税調の議論がどのように進むのかを常にウォッチし、改正に備えた税務のポイントを早めに整理しておきたいところです。