2017年8月14日
景観の悪化や悪臭、火災や倒壊など、高齢化・人口減少社会において大きな問題となっている空き家。国や自治体でさまざまな施策を打ち出していますが、空き家問題の施策には、固定資産税などの税制が深く関連しています。新しい法律や税制改正も踏まえながら、税務問題としての空き家対策について改めて考えてみたいと思います。
不動産を持つことによる税負担として固定資産税があり、空き家も例外ではありません。固定資産税の納付義務は、空き家を持つ人に売却等の処分を促します。しかし、固定資産税の規定が、空き家を解体・処分することを難しくしている面もあります。
というのも、建物を解体して更地にすると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなり、大幅に負担が大きくなるからです。とくに土地に市場価値がない場合、空き家を解体せず、放置する方向に気持ちが向いてしまいます。
そこで、平成27年5月に完全施行された空き家対策特別措置法では、そのまま放置すれば倒壊の危険や衛生上有害になるおそれのある空き家を「特定空家等」として指定。指定された場合、その状況が改善されないと、土地に対する固定資産税の優遇措置が受けられなくなりました。
空き家対策特別措置法によって、倒壊などの危険がある家屋の解体は進むことが期待されますが、市場価値がない土地の処分方法がなければ、抜本的な問題解決は難しいとの指摘もあります。自治体への土地の寄付、所有権放棄などの方法がとれるような制度を求める声もあり、実務家として、今後の国や自治体による施策に注目しておく必要があるでしょう。
空き家は居住者が亡くなることで顕在化することが多く、税理士が相続税対策で関わる問題でもあります。たとえば、市場価値がある程度認められる空き家であっても、相続後に相続人の共有財産となって所有権が分散してしまうことで、処分が難しくなるケースも多いようです。
空き家についても、ほかの相続財産と同じように生前対策が重要です。遺言書の作成のほか、生前贈与や信託契約による所有権の移転、被相続人が介護施設に入居している場合の不動産の売却や賃貸などを、生前であれば被相続人の意思を尊重して行えるため、選択肢は大幅に広がります。
税制としては、相続時精算課税や信託税制、相続開始後に不動産を譲渡した際の相続税の取得費への算入などをチェックしたいところです。また、平成28年度税制改正で導入されたのが、相続した空き家を譲渡する際の特例。家屋を解体して更地にして譲渡したり、耐震リフォームして敷地と建物を譲渡したりといった場合、譲渡所得から最大3000万円を特別控除することができます。
このように、空き家問題の対策は、税務でのみ語れるものではありませんが、税制を適切に活用することでスムーズに問題解決に導ける可能性が高まります。不動産の市場価値、利用価値にも目を向けながら、税理士が中心となり、最適なソリューションを提供できるようにしたいものです。