2016年6月13日
税理士は国税の専門家として、経営者から頼られる存在です。しかし、すべての税制を熟知しているわけではないのが現実。とくに見落としがちなのが、ほかの士業の実務に関わる税金です。今回取り上げるのは、商業登記の登録免許税。顧問先となる企業で、必ず関わる機会がある税金であるため、税理士も基礎知識を身につけておきたいところです。
税理士が登録免許税について調べることが最も多いのは、法人設立登記の場合ではないでしょうか。登記代理は司法書士が行うため、直接的に実務は行わなくても、会社設立に際しては法人税や事業税等の税額に関心が集まることが多く、設立費用の一つである登録免許税についてもアドバイスが求められます。
株式会社を設立する際の登録免許税は、資本金の1000分の7、15万円に満たない場合は15万円です。また、合同会社も同じく資本金の1000分の7ですが、最低は6万円。合名会社や合資会社は一律6万円です。
この「資本金の1000分の7」は、商業登記における登録免許税ではよく出てくる数字ですので覚えておきたいところです。たとえば、増資を行う場合も、増加する資本金の1000分の7(最低3万円)が課せられます。なお、吸収合併では、存続会社の増加した資本金の額に対しては1000分の1.5(消滅会社の合併直前の資本金を超える部分については1000分の7)となっています。
会社設立後は、各種の変更登記の登録免許税についてチェックしておく必要があります。最も件数が多いと思われるのが、役員変更です。役員がほとんど変わらない中小企業でも、任期満了による重任の登記が必要となります。長期間登記がないと、法律上会社が解散したとみなされることもあるため注意が必要です。
役員変更の登録免許税は、1件につき3万円。何人交代していても、一度に申請すれば3万円です。そして、ほかの多くの税制と同様、中小企業の軽減税率があり、資本金1億円未満であれば1万円です。
株式譲渡制限のある非公開会社では、役員の任期を最大10年に延長することができます。これも事務軽減のほか、登録免許税の「節税」となります。なお、合同会社等の場合は役員の任期はありませんので、設立時だけではなく設立後も登録免許税の税額が有利ということになります。
なお、商業登記では、上記の役員変更と同じ3万円の税額が多いのが特徴。たとえば、商号変更、本店または支店移転(管轄区域内)、氏名など登記事項の変更なども3万円となっています。
税理士に対する一般の方々の認識は「税金のことなら何でも知っている人」です。税額について総合的にアドバイスすることが求められます。登録免許税について、専門外だからといって避けて通るわけにはいきません。基本的な知識は頭に入れておき、質問を受けた場合にその場でアドバイスできる範囲を広げておきたいところです。