2014年9月5日
資金繰りは企業経営において最も気になることの一つ。中小企業に関しては、財務のアドバイザーである税理士への期待が大きい分野です。
しかし、金融機関の与信等の動向は刻々と変わります。必ずしもすべての税理士が把握しているわけではなく、経営者が持つ税理士への不満の一つとなっています。
求人においても、資金繰り、融資交渉に強い税理士は評価が高くなります。
その際にアドバンテージがあるのが、金融機関の職員を務めた経歴のある税理士。
融資審査を行う側からの視点で顧問先にアドバイスができることは、やはり強みでしょう。
ある金融機関OBの税理士に、税理士が融資審査に関して何を勉強しておくべきかを聞いてみたところ「まずは『金融検査マニュアル』を熟読して欲しい」と語ってくれました。
融資審査においては金融庁の存在は非常に大きいことが知られています。当局の意向を探るための資料として、「マニュアル」は基本中の基本となります。
金融検査マニュアルは、ボリューム的にも膨大ではなく、精読するのにさほどの困難はありません。
とくに、債権者区分と引当金の関係などは頭に全て入れるくらいの意気込みで臨みたいところです。特に税理士の場合、別冊の「中小企業編」も忘れずにチェックしましょう。
そして、前出の税理士がもう一つ挙げるのは、金融機関の職員と「携帯で話せるほどの」関係を築くこと。
とくに支店長クラスについては、地域ごと、金融機関ごとに個人的なつながりを持つことが重要です。
転職を考える勤務税理士にとっても人脈は財産です。
転職時に顧客を持ち出すことはトラブルのもとですが、業務で得た人とのつながりは、そのまま移行できることも多いものです。
新しい融資メニュー等、金融機関の与信の状況について情報収集できるチャンネルを確保していることは、転職先へのアピールポイントになります。
また、融資申請の書類を作る際は、収益性、安全性、生産性、成長性などを計る経営指標についても知っておく必要があります。
金融機関は、減価償却や役員貸付の扱いなど、税務申告書を修正した上で審査に利用していますので、その勘所も押さえておきたいものです。
金融機関から見て、融資の稟議を通しやすい申請をしてくれる会社はありがたい存在です。税理士はそのサポートをする唯一無二の存在。
書面添付や会計参与など、税理士が決算書の信頼性を担保することで優遇を行う金融機関もあります。
「融資に強い」勤務税理士となるためには、資金繰りに関する知識と人脈をできるところから構築する必要があります。
現在勤務する事務所の業務の質を高めることはもちろん、専門家としての将来を考える上でも意識的に行っておくべきでしょう。