2017年6月5日
毎年、業務に大きく影響し、すべての税理士が注目する税制改正。今年度は配偶者控除の見直しや、経済活性化・働き方改革に関連する税制とともに、資産課税などでの税補充と確実な課税のための改正が行われています。税理士の業務に関連するものを中心に、概要とその影響を探っていきましょう。
平成29年度税制改正で、改正案提出前から大きな話題となっていたのが、「103万円の壁」などといわれる配偶者控除の見直し。しかし、予測されていた夫婦控除等の新制度は実現せず、所得控除額38万円の対象となる配偶者の給与収入金額上限が150万円へ引き上げられるなどにとどまりました。
所得税の新制度としてはもうひとつ、積立・分散投資に適した投資信託に定期かつ継続的な方法で投資を行う「積立NISA」の創設が注目されます。年間40万円までの投資については、非課税期間20年の枠が設けられ、現行の年間120万円、非課税期間5年のNISAとの間で選択可能となり、老後資金などの長期積み立てに適した制度となっています。
相続課税は厳格化の方向にあります。まず、国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲について、相続人または被相続人が10年以内に住所を有する日本人の場合には国内外の財産を課税対象とするとされました。この期間は、従来5年となっており、相続課税の強化といえる変化です。
そして、資産税を扱う税理士がここ数年、大きな注目をしていた、いわゆるタワーマンション節税にもメスが入ります。居住用超高層建築物に係る固定資産税の税額の按分方法を、最近の取引価格の傾向を踏まえたものに見直しするとされています。今後の運用の在り方が注目されるところです。
法人関連では、成長力を高める施策に重点が置かれています。試験研究費の税額控除制度について控除率の引き上げや、対象範囲拡大などが行われます。また、所得拡大促進税制では、平均給与等支給額が前年度比2%以上増加した場合の控除税額の拡充などが行われています。
そして、税理士の多くが特に気になるのは中堅・中小企業に対する税制でしょう。所得拡大促進税制については、中小企業に対して賃上げへの支援がより強化。そして「地域未来投資促進法(仮称)」に基づく一定の設備投資について、特別償却又は税額控除ができる「地域中核企業向け設備投資促進税制」の創設、中小企業投資促進税制の上乗せ措置を「中小企業経営強化税制」と改組して、設備を追加するなどの措置が施されました。
以上、平成29年度税制改正について簡単にみていきました。今回の改正では外国子会社合算税制の見直し、事業承継税制の要件緩和など、重要な改正はほかにも様々あります。税理士として、実務における変化、顧問先への影響を考えておきたいところです。