2015年3月23日
平成27年度の税制改正大綱では、平成26年の「骨太の方針2014」で示された、法人実効税率の20%台への引き下げへの第一歩を踏み出しています。 同時に、減税分の補てん策として課税ベース拡大に関する改正点も盛り込まれています。 今改正の、税理士とその顧客である企業にとって重要なポイントについて考えていきましょう。
大綱では、法人税率が25.5%から23.9%へ、法人事業税の所得割(標準税率)が7.2%から6.0%、28年度には4.8%に引き下げられます。
その結果、実効税率は、2.51%下がり34.62%から32.11%、平成28年には31.33%となります。
将来的な実効税率20%台への引き下げ方針については維持。今後の減税も視野に入れている状況とみてよいでしょう。
法人税減税に伴い、増収策としての課税ベース拡大策も打ち出されています。
まず法人事業税の外形標準課税の拡大。所得割と資本割・付加価値割との割合を、現行の所得割4分の3、資本割・付加価値割4分の1から、2年間でそれぞれ2分の1とする方針です。
そして、資本金1億円以上の大企業における欠損金の繰越控除が縮小されます。
現行制度において繰越控除が可能となっている利益の80%を、平成27年4月以後は65%、平成29年4月以後は50%とする方針です。
試算では、法人実効税率の引き下げにより4,570億円の減税が見込まれています。
そして、外形標準課税の拡充や欠損金の繰越控除の縮小、また租税特別措置の見直しなどによる増収分を差し引きすると、2,060億円の先行減税となる見通しです。
減税分の増収源を確保する「ペイアズユーゴー」の観点からすると、今後、さらなる課税ベース拡大による増収策が打ち出されてくる可能性が高いといえるでしょう。
税理士の主要顧客となる中小企業は、法人税率の引き下げの影響はありません。今回の改正では、27年3月に期限切れとなる15%の軽減税率の行方に関心が向いていました。
27年度改正では、軽減税率は2年延長され、廃止は回避された形となりました。
大企業にとっては、法人実効税率引き下げと課税ベース拡大はトレード・オフの関係です。
しかし、中小企業は法人税減税への期待はほぼないといってよく、今回延長された軽減税率の2年後の存廃、
そして今回は手が付けられなかった中小企業への課税ベース拡大が懸念材料となります。
中小企業への増税が行われるとすると、まず相当程度の資本金、企業規模を持った中堅企業が対象となる可能性が高くなるため、
税理士として、今回の改正点に関する実務の変化をチェックするとともに、今後の税制に関する議論の行方についても目を配る必要があるでしょう。