2015年3月12日
勤務税理士が顧客から委嘱を受け、自らの名前で税理士業務を行うことができる「所属税理士制度」が2015年4月からスタートします。
同制度は、事務所の大型化、専門分化の流れの中、勤務税理士が事務所・法人内で、より独立した立場で業務を行えるようになる可能性を秘めた制度です。
日税連は制度開始に向けて契約書式、実務に関するQ&Aを整備するなど、運用に向けた準備を進めています。
同制度のポイントとなるのは、代表税理士・税理士法人が、所属税理士が委嘱を受けることに「承諾」を与えることや、
顧客となる委嘱者へ、所属税理士の名前で業務を行うことを説明する義務があることです。
日税連が公表したQ&Aでは、これらの合意が成立する条件として、取り決めを書面で行うことの必要性が強調されています。
そして、必要書面の雛形として「業務委嘱に関する承諾書」、「業務委嘱に関する説明書」、「業務委嘱に関する説明確認書」、
「委嘱契約終了等報告書」、「所属税理士が他人の求めに応じ自ら業務の委嘱を受ける場合の約定書」、
「所属税理士が他人の求めに応じ自ら業務の委嘱を受ける場合の重要事項説明書」などを作成しています。
ここから見えてくることは、所属税理士制度の運用には、代表税理士・税理士法人による制度導入の積極的な意思が前提となることです。
公表された雛形をもとに、事務所の統一フォームにより書面を整備し、さらに所内で所属税理士と委嘱に関する取り決めを行い、
依頼を受けた場合の報告体制等を築いておくことが絶対条件となります。
所属税理士制度の普及については今後の展開が予測しにくい面がありますが、
個々の税理士の得意分野に合わせて積極的に顧客を獲得し、ひいては事務所の発展に資するようなポジティブな運用が期待されるところです。
大型の税理士法人では、すでに所属税理士に関する社内体制の整備に動いているところもあるようです。
中規模法人、税理士事務所においても、たとえば法人税務を中心とする事務所の事業展開として、
相続・事業承継分野に強い人材を所属税理士として雇い入れる動きが発生する可能性があります。
勤務税理士としての働き方を考える上では、将来の独立とともに、企業内独立のような形を念頭に、
所属税理士としての勤務を選択肢として加えることができるでしょう。
所属税理士として活動する選択肢があることを明記して求人活動を行う事務所が登場することも予想されます。
業界再編の起爆剤となる可能性を持つ制度として今後も注目していきましょう。