2016年2月18日
資産価格の上昇で、都市部のマンション価格の高騰がみられたことで、投資物件として大きな注目を浴びているのが、超高層マンションです。そして人気の要因の一つに、増税された相続税への対策があることも指摘されています。このタワーマンション節税に対し、税務当局は縛りをかける姿勢をみせています。
いわゆるタワーマンション節税は、路線価による財産評価を利用したもの。分譲マンションの多くは敷地を区分所有し、部屋の戸数で分けられます。建物は、同じ床面積なら階数が違っても評価は変わらないため、眺望等、高層階のプレミアムが付いた物件は実勢価格よりも評価が大幅に低くなります。
国税庁は、2013年までの3年間について調査し、300件を超えるケースで、マンション評価額が時価の3分の1を下回ったケースがあったとしています。一般に時価の7割から8割になることが多いといわれる路線価評価が、実態と著しくかい離している現状があったことは間違いないでしょう。
そして平成27年11月はじめ、報道によると国税庁は全国の国税局に対し、高層マンション購入による行き過ぎた節税の監視を強化するよう指示しました。以前から、相続発生直後に売却したり、被相続人に購入意思が認められなかったりした場合などで同様の節税策が否認される例がありましたが、財産評価を認めないケースについて、さらに厳格な基準を設ける姿勢を示したといえるでしょう。
今回の国税庁の動きで特徴的なのは、その報道のされ方です。一般紙やテレビ、税務業界紙等、各社から同時に監視強化方針に関する報道がなされました。
国税庁の記者クラブでは、当局の担当者が記者に向け「レク(レクチャーの略)」と呼ばれる集まりで、行政の発表などの情報提供がなされることがあります。今回も、報道各社の独自取材ではなく、当局が各社に一斉に情報を提供したことがうかがえることからも、当局の本気度が示されているといえるでしょう。
当然、この当局の姿勢は、相続案件を手掛ける税理士の実務にも大きく影響します。節税へのリスクがどの程度高くなる運用が行われるのかは今のところ不明ですが、実勢価格と路線価評価の差が大きくなる節税策については、慎重に事前の検討を行う必要があるでしょう。また、当局の方針の基準が通達やQ&A等で示されたり、否認の事例が報道されたりする可能性があるため、注視しておくことが重要だと思われます。