2015年10月22日
少子高齢化や人口減少、地方の疲弊等、日本は数々の大きな課題を抱えています。そして、これらの問題の帰結として表面化しているのが、誰も住まないまま老朽化した「空き家」の問題。国は空き家の撤去や、土地の有効利用のための施策を打ち出しており、税制も大きく関連しています。
空き家問題の要因は、高齢化、人口減少、また相続問題等の諸問題が複合化しています。所有者の死亡後、居住する者がおらず、また売却することもできないまま放置されたり、相続争いにより所有権が確定しないまま長期間が過ぎたりといったこともあります。
老朽化した建物が手入れをされないまま放置されることで、景観の破壊や異臭、不審火、地震時の倒壊などの重大な問題が発生することもあり、国、地方自治体を挙げ、有効な対策を講じる必要性が高まっています。
空き家問題に対する対策の一つとして、平成27年5月に完全施行された空き家対策特別措置法があります。同法により、倒壊の恐れや衛生上問題のある空き家(特定空き家)の所有者等に対し、自治体が撤去や修繕などの必要な措置を講じるよう指導、勧告、命令を行い、従わない場合は行政代執行により処分を行えるようになりました。
そして、同法は税制と深く関わる政策でもあります。平成27年度税制改正では、空き家対策特別措置法により勧告を受けた建物の敷地は、固定資産税と都市計画税の住宅用地特例から除外し、税額を高くする負のインセンティブを与える規定が設けられています。
また国土交通省では、平成28年度の税制改正要望として、上記のペナルティによる空き家の処理の推進に加え、空き家の撤去や耐震リフォームを行った所有者に対して、所得税の控除などにより税負担の軽減を行うインセンティブ制度の創設を求めています。
資産税に関するアドバイスを行う税理士にとって、空き家対策特別措置法の知識は必須。固定資産税などの負担を考慮しながら空き家の処分について助言を行うことが求められます。今後の改正での新たなインセンティブ策の創設にも注目しておく必要があるでしょう。
また、税理士は、遊休不動産の有効利用についてコンサルティングを行うことができる存在でもあります。賃貸物件の建築や駐車場設置、太陽光発電パネル設置等、様々な税制が関わる収益物件化の相談を受けることもあるでしょう。税制知識を駆使しながら、また他の事業者との連携を行いながら、空き家対策のアドバイスを行えるようにしたいところです。