2015年5月15日
高齢化の進展とともに、企業の事業承継が重要な課題として取り上げられることが多くなり、 税理士の顧問先に対する業務にも変化が表れています。そして、これは事業会社固有の課題ではなく、 税理士事務所にとっても大きな問題となっています。税理士業界も一般企業と同じように、 事務所承継、とくに親子承継が困難となる状況があります。
税理士として活動するには、いうまでもなく資格取得が必要です。
近年、少子化等の影響で、税理士試験には顕著な受験者減少がみられます。
平成26年度の受験者は、前年に比べ4千人以上減少。最終合格者の数は大きな変化はありませんでしたが、
今後、これまでは毎年約1千人を数えていた合格者の低落が起こることが予想されます。
現在、税理士事務所の抱える問題として極めて多いのが、後継者と目される親族がいない、
あるいは資格取得に至っていないというケースです。事務所内で唯一の資格者である高齢の所長が引退を検討しており、
実質的に実務を手掛けていない事務所も多いようです。
そういった事務所で、所長が急に病気になったり、亡くなったりすることで、事務所の解散を余儀なくされる例もあります。
事務所の法人化、大型化の流れもあります。現在、全国の税理士事務所数は減少していますが、税理士法人数は増加しています。
事務所規模は二極化の傾向が見られる状況です。高齢の税理士の廃業、親族後継者の不足と軌を一にして、
事務所のM&A、事業譲渡(顧問先の引き継ぎ)等、様々な形態で業界の再編が進んでいます。
この状況下で、勤務税理士のキャリアプランにも変化が生じています。
勤務税理士として活動する方の中には、組織内で評価を上げ、出世を志す方のほか、将来、
独立して所長税理士として活動するキャリアプランを考えている方がいますが、この「所長」となるルートが多様化しているのです。
まず、勤務する事務所が法人化している場合、あるいは法人化を目指している場合、
将来的にパートナー、共同経営者として活動することを念頭に置いて勤務する動きが見られます。
また、資格者が少ない事務所では、所長の廃業とともに、非親族の勤務税理士が事務所の引き継ぎを打診される場合もあります。
これは、一般企業においては、社員や役員が資金調達し、自社を買収する、MBO(マネジメント・バイアウト)に近い形態だといえるでしょう。
また、M&Aに関しても、後継者不在という同様の承継問題を抱える事務所同士が合併についての協議を行うことも考えられます。
その際、互いの事務所の勤務税理士が、新規設立事務所においてどのような役割を担うことになるのかが重要。
勤務税理士がM&Aの成否を分けるキーパーソンになります。
転職を考える勤務税理士の方が知っておきたいことは、最近、税理士事務所の求人の中には、
明示しているか否かにかかわらず、将来のパートナー税理士への就任、あるいは事務所承継を見据えた募集があることです。
平成26年度税制改正で導入され、勤務税理士が自らの名前で税理士業務を受任することができる「所属税理士制度」も、
共同経営や事務所承継を念頭に置いた税理士のキャリア形成の多様化に、制度上の手当てを行う動きとみることもできます。
親子承継の困難性が増す中、勤務税理士は、就職先の事務所でキャリアアップを目指すことはもちろん、勤務する事務所の長となる、
という選択肢が存在することを考慮しながら転職活動をしていく時代になるのかもしれません。自らの税理士としての5年後、
10年後の姿を思い描きながら転職活動を進める必要がありそうです。
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