2014年9月25日
弁護士事務所をはじめ、ほかの士業事務所が税理士の求人を出すことがあります。
士業間には業際問題など法律上超えられない壁があり、顧客に総合的な法律的サービスを提供するために、税理士を必要とするケースがあるのです。
士業事務所のキーワードとして「ワンストップサービス」という言葉がよく聞かれるようになりました。自分の事務所を窓口に、ほかの士業者や企業への紹介等が幅広く行える体制にすることを意味します。
ワンストップサービスは、ほかの事業者の紹介によっても行われますが、一歩先に進めると、自らの事務所に他士業者の事務所を併設する形態が考えられます。そのような組織を構築する事務所で税理士として活動する場合でも、登録上は税理士事務所を立ちあげる、あるいは所属税理士となる必要があります。場合によっては、組織内独立のような形で活動することになるでしょう。
ここで注意しておきたいことは、募集する事務所のトップとなっている士業者の主要な業務です。
士業ネットワークの中心になることの多い弁護士が税理士を募集する場合を例に取りましょう。刑事事件の弁護業務には、あまり税理士との連携は発生しないと思われます。税理士を必要とするのは民事系でしょう。
民事系の業務では、とくに企業法務が税理士との親和性が高いと思われます。弁護士が法律顧問を務める会社に税務サービスを提供する顧問税理士となる場合のほか、M&Aや事業承継、事業再生に関して弁護士とチームを組んで税務部門を担当する業務も考えられます。
また、民事事件では、相続、遺産分割に関しても弁護士と連携して業務に当たる機会が多いでしょう。最近の資産税への注目の高まりもあり、相続・事業承継分野に力を入れる他士業者の税理士人材の需要が期待できます。
その他、税務訴訟を扱う弁護士事務所にも税理士の需要があるのではないでしょうか。
裁判で、税理士補佐人として法廷に立つという、ほかの税理士法人ではめったに関わることのない業務に携わることも考えられます。
このように、他士業事務所への転職は、税理士としての業務の幅を広げるチャンスとなります。
しかし、その反面、オーソドックスな法人の会計税務等の業務をほとんど行わなくなることも考えられ、自分が希望する業務とのミスマッチを防ぐ視点を持つ必要があります。これは、企業内税理士として転職する際に考えるべきこととも似ています。
他士業からの募集では、その事務所の代表者の資格、現在の仕事、そして所属する税理士の数などを調べ、転職者に何を期待しているのかを把握する必要があります。事前の聞き取りも十分に行い、業務内容を理解した上で転職活動に臨むことが大切でしょう。