2016年3月17日
2016年も、税制改正によって様々な新制度がスタートします。その中で、さっそく1月から始まった新しい税制で、多くの個人に影響が予想される税制として、改正特定公社債等税制があります。制度の概要と税理士としてできることなどをまとめてみましょう。
最近の税制改正の方向性の一つとして、株式や債券、投資信託など、金融所得課税の一本化があります。今回の改正では、その一環として、複雑さが指摘されていた特定公社債等による収入の課税方式が統一されました。
特定公社債等とは、国債や地方債、外国国債、外国地方債、公募公社債、上場公社債、一定の公社債投資信託など。従来、特定公社債等は、譲渡益は非課税、利子は源泉分離課税、満期による償還差益は雑所得となりほかの所得とともに総合課税とされていましたが、今回の改正で、原則として全て申告分離課税となります(利子については源泉徴収で課税関係を終了することも可能)。
今まで非課税であった譲渡益が課税対象となることに注意する必要があります。確定申告による納税が必要となるため、税理士として顧問先への注意喚起を行う必要があるでしょう。一方で、ほかの上場株式等の譲渡損益や配当金との損益通算、譲渡損失の繰越制度も利用できるため、金融商品による所得の内容を再検討し、確実に有利な申告を行いたいところです。
また、制度改正に伴い、上場株式等と同様に、特定公社債等についても特定口座の利用が可能となります。源泉徴収付き特定口座であれば、確定申告を不要とすることができます。特定口座の利用による利便性、また税額の有利不利は個々の事情により異なりますので改めて検討したほうが良いでしょう。
金融商品の課税一本化の流れにより、税理士にとっては、顧問先の個人が持つ金融資産を総合的にみて、税務上のアドバイスを行う業務がやりやすくなっているともいえます。会社の顧問税理士を務める場合に、法人だけではなく経営者の個人所得についても業務の幅が拡大することが期待できるでしょう。
今回の税制改正は、直接的に業務につながるものではないかもしれませんが、金融資産に関する税務により厚い信頼を得ることは、事業承継や相続などへの業務につなげるためにも非常に有用ですので、顧問先訪問時のほか、ニュースレター、ホームページやメールなど、情報提供の方法を工夫し、積極的に提案ができるようにしておきたいところです。