2015年4月21日
設立間もないベンチャー企業に対して株式引き受け等の投資を行った個人に対し、税の優遇を行うエンジェル税制。 適用要件の緩和が進み、平成27年度税制改正では、国家戦略特区におけるさらなる緩和も設けられています。新規法人のスタートアップ支援を行う税理士は、 同税制の概要と、業務で行うべきことを整理しておく必要があります。
エンジェル税制の概要についておさらいしておきましょう。税優遇を受けることができるのは、ベンチャー企業に対し株式を引き受け等の投資を行った人。
まず、投資を行った年に、以下優遇措置A・Bいずれかの優遇を受けることができます。
優遇措置Aは、投資額マイナス2,000円を、その年の総所得金額から控除できるもの。投資額の上限は、総所得金額の40%と、
1,000万円のいずれか低い方です。優遇措置Bは、ベンチャー企業への投資額全額を、その年の他の株式譲渡益から控除できるもの。
こちらは控除額の上限はありません。
株式を売却した年も優遇が受けられます。売却により損失が発生した場合、その年の他の株式譲渡益と通算でき、
その年に通算しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって通算できます。
エンジェル税制の適用企業となるには、会社設立から10年あるいは3年未満の会社であることや、未登録、未上場の株式会社であること、
特定の株主グループ以外からの投資が6分の1以上ある会社であること、大規模法人の関係する法人ではないことなどがあります。
また、経済産業省が定める「新規性要件」を満たすことも必要です。要件は設立経過年数や受けられる優遇措置によって異なりますが、
研究者あるいは新事業活動従事者の割合、営業キャッシュフローが赤字であること等、新規事業への積極投資が行われていることを示す要件が設定されています。
なお、平成27年度税制改正では、国家戦略特区において、設立経過年数や営業キャッシュフローなどについて要件が緩和されています。
上記の適用要件の複雑さは、エンジェル税制の適用を目指すうえでのハードルとなっています。そこで活用したいのが事前確認制度です。
自社がエンジェル税制の適用企業であることを事前に確認、説明することができれば、投資家も安心して投資を行うことができます。
また、経済産業省のホームページで、確認企業が公表されることで、投資家へのPR効果も期待できます。
エンジェル税制のネックは、ベンチャー起業家と投資家双方が制度を理解することではじめて効果を発揮するという点です。
どの企業にエンジェル税制が適用されるのかを投資家が知らない限り、適用を目指す企業も、投資の呼び込みというメリットを享受できないことになります。
税理士は、その際、個人投資家と起業家の橋渡し役となれる存在です。エンジェル税制の適用に該当する企業であるか否かの判断を行い、
活用を提案することはもちろん、投資家へのアピールをどのように行うのか、ということを含めてアドバイスし、さらに投資家への情報提供、
確定申告の仕方等も合わせて行うことができればベストです。
顧問先となるベンチャー企業の成長は、税理士の業務規模を拡大させることでもあります。
エンジェル税制の関連業務は、スタートアップ支援、コンサルティング業務の幅を広げてくれます。
税理士のスキルアップとしても、大きなきっかけとなる可能性を秘めているのではないでしょうか。