2015年7月10日
税理士の顧問先の中心となる中小企業の課題の一つが、会計基準が未確立であること。中小企業を対象とした基準のうち、小規模企業で採用しやすいものとして「中小企業の会計に関する基本要領」があります。中小会計要領による会計の整備のため、税理士に期待されるものは大きく、顧問先の事業展開のために身につけておきたい知識です。
2015年4月に公表された「第6回税理士実態調査」によると、中小会計要領を関与先に適用している税理士の割合は24.3%にとどまっています(会計参与設置企業を想定した「中小企業会計に関する指針」は18.8%)。
一方、中小会計要領による会計への注目は高まっている状況にあります。最近、融資申請の際、中小会計要領での会計、そして中小会計要領の適用に関するチェックリストの提出を依頼されるケースが増えているという話はよく聞きます。チェックリストでは中小会計要領に従って計算書類を作成していることについて、税理士、公認会計士等による確認が必要です。
会計ルールに沿った財務情報は、資金調達の際の信用度を高めます。また、信用保証協会の保証料の割引制度もメリットの一つ。今後も、金融機関が行う与信において、会計基準の重要性は高まるものと思われ、税理士の資金繰り支援業務にも影響するでしょう。
チェックリストの項目を見ると、発生主義による収益・費用の計上時期、資産や負債の計上方式など、大きく分けて15項目が設定されています。
中でもポイントとなるのは、税務では原則として損金として認められない引当金の計上や、減価償却や貸倒損失、有価証券の時価評価など、税務上の処理と異なる、あるいは税務上は義務となっていない会計処理です。
中小会計要領のうち、税務と、資産や損益の状況を正確に外部に報告することを目的とする財務会計との異同が表れる部分は、とりもなおさず、金融機関が税務申告書だけではなく中小会計要領による決算書、チェックリストの提出を求める理由となります。つまり、チェックリストの確認項目を詳しく分析していくことが、中小会計要領への理解を増すための近道といえます。
会計監査人を設置していない中小企業にとって、税理士は財務情報の信頼性を担保するための重要な存在であることは論を待たないところです。また、会計基準を満たした財務書類を作成することは、外部報告のためだけではなく、経営者自身が必要な情報を入手し、経営状況を的確に把握して、経営戦略を策定するためにも有用です。
財務会計への意識の高さは、今後中小企業を顧問先とする税理士に強く求められることになるでしょう。現在、中小会計要領を必要とする業務を行っていない勤務税理士の方々も多いと思われますが、自己研さんとして集中して学ぶ時間を設けておくことが、キャリアアップのためにプラスになってくれるでしょう。
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