2015年3月5日
中小企業の相続・事業承継に社会的な注目が高まっています。税法においても、承継を円滑化するための重要な法整備が行われる過程にあります。
なかでも重要な税制として、平成21年度に導入された事業承継税制があります。
同税制は平成27年に改正が行われ、適用の要件が緩和され、さらに注目が高まっている状況です。
事業承継税制は、贈与税や相続税が納税猶予される制度。贈与税では自社株の後継者への贈与について100%猶予、
相続税は後継者が引き継いだ自社株の80%について猶予されます。
相続時に多額の税金が課せられることで事業継続がままならなくなる事態を防ぐための選択肢となっています。
しかし、同制度には経営者・税理士から使いにくさが指摘される現状がありました。
特に問題となっていたのが、相続開始後の雇用維持要件です。従業員の8割以上を維持しなければならないため、将来の経営の自由度が低くなることを懸念し、
活用に二の足を踏むケースが多かったのです。
今改正では、この雇用維持要件が緩和されています。雇用の8割維持は、5年間の平均で判定することとなりました。
依然最も厳しい要件であることは確かですが、実務者の要望を受けた緩和策として一定の評価を受けているようです。
また、その他にも利用のハードルとなっていた親族承継要件について、親族外承継に制度適用の対象を拡充、役員退任要件も緩和され、
代表者の退任のみで適用可能となったことなど、今改正での注目すべき点は多数あります。
経営者の高齢化にともない、事業承継の重要性が高まっていることは間違いありません。
しかし、承継の事前対策は経営者が積極的に取り組まず、後回しになりがちです。
その原因として、承継対策の必要性の啓発、承継の手法の提案などを行う第三者的なアドバイザーがいないことが挙げられます。
中小企業において、税理士はその役割を担う重要な存在であることは論をまちません。
相続税法改正の影響もあり、事業承継対策は税理士事務所の主要な業務の一つとして展開していく流れにあると言えます。
事業承継の事前対策は、5年から10年を費やして行われることも多い業務です。
これは、多くの中小企業の法人税務を展開する事務所にとって、継続業務の潜在的需要があることを示しています。
税理士求人においても、事業承継税制を含めた実務の経験はさらに重要なスキルとして認識されることになるでしょう。