2017年2月13日
中小企業を顧問先にする税理士は、税メリットのある中小企業向け政策には常に目を向けていなければなりませんが、その中で現在注目される制度として、2016年7月に施行された「中小企業等経営強化法」があります。実務者として、認定に必要となる「経営力向上計画」の策定についての知識を身につけておきたいところです。
中小企業等経営強化法に基づく認定の主なメリットは税優遇と融資優遇にあります。認定を受けると、一定の生産性を高める機械装置を取得した場合に3年間、固定資産税を2分の1に軽減。また、政策金融機関の低利融資、信用保証等が受けられる制度もあります。
認定を受けるためのハードルとなるのが、事業分野ごとに策定される指針に基づき、人材育成、コスト管理のマネジメントの向上や設備投資等の取組を記載した「経営力向上計画」を作成すること。申請については、中小企業庁で、手引き、リーフレットなどを策定していますが、このほどそれに加え「認定計画事例集」が公表されています。
「事例集」では、様々な具体的な計画が、実社名を挙げて紹介されているため、今後申請を行う企業は非常に参考になります。同法は対象となる事業分野が幅広く、そのため経営力向上のための計画も多様です。事例集の中からいくつか簡単に紹介しましょう。
機械などの設備投資により生産性を高める事業として、まず思いつくのが製造業でしょう。ある板金加工、機械装置組立会社は、今まで職人が行っていた表面研磨処理作業のロボット化、また工程管理システムのIT化を行うなどの計画で認定を受けることに成功しました。
建設業では、鉄骨工事、耐震補強工事などを行う会社が、設計の三次元データ化、溶接ロボットの導入を図った事例、そのほか、ネットワーク技術などを活かして海外販売を計画する衣服卸売会社、セルフレジ、電子マネーなどの決済機能の多様化や、生産者管理システムの導入などを計画したスーパーマーケット等が紹介されています。
同法は税金に関連する制度であるだけに、計画策定をする際、税理士の役割が大きいことは間違いありません。税優遇が会社にどれだけのメリットをもたらすかといった税務の観点からのアドバイスができるでしょう。また、計画が「絵に描いた餅」にならないよう、キャッシュフローの見通しなど、税理士が有するファイナンス知識も決定的に重要となります。
もちろん、税理士の知識だけで計画を作ることはできません。業種ごとの経営改善策、導入する機器等を決定するまでには、様々な専門事業者、コンサルタント等との連携が必要となるでしょう。経営者と信頼関係を築いた税理士が、それら専門家との連携のハブとなることができれば、業務の幅はさらに広がるのではないでしょうか。