2016年4月11日
税理士が顧問として税務・申告業務を行うことの多い業種のひとつに、スーパーや生鮮食品等の小売店があります。とくに関与することの多い小規模な店舗では、低コストかつ精緻な財務体制の整備をサポートする需要が高まっています。小売業の現状、そして税理士がコンサルティングできる分野について考えてみましょう。
業界の現状としてよく語られるのが、総合スーパー(GMS)の低迷と、個性ある小規模店舗の台頭。大手企業も、地域に密着し品目を絞った形態の小規模スーパーを展開し、中小チェーンや個人商店を含め、地域一番店を目指した競争が行われています。
そこでカギとなるのが、人口構成、年齢層の変化等、地域のニーズ分析。ポイントカードによるデータ分析の導入も安価にできるようになり、分析をマーチャンダイジングに反映させたり、高齢化に合わせ宅配サービス等の新たな業態を展開したりといった店舗が多くなりました。
また、顧客層に合わせた店舗づくりも積極的に行われています。たとえば人口減に合わせ、駐車場を改築、収容台数よりアクセス性を重視し、入庫しやすい形態にしたり、冷蔵庫や商品棚等の設備を、一定層の顧客が利用しやすいものに変えたりといった需要が発生しています。
こういった店舗展開、業態の変化に会計知識は必須です。最も重要性が高いのが、大手チェーンと差をつきやすい購買管理、在庫管理システム構築。期末には棚卸資産の評価方法の選択、作業効率化などに専門知識・実務能力を発揮したいところです。
また、地域の実情に合わせ、設備の大規模な入れ替えの際には、ファイナンス手法により投資効率、キャッシュフロー、損益分岐点への影響を詳しく分析し、財務指標を使って助言したり、節税に関するアドバイスをしたりといった業務も必要となります。
税務では、消費税引き上げへの対応も重要です。次回増税時には軽減税率の導入が予定されており、システム変更に関して不安の声が多く聞かれます。軽減税率の対象食品を購入することの多い小売業では、早めに業務への影響、システム変更、経理での注意点をまとめ、情報提供しておいたほうがよいでしょう。
小売店は、表面的にみれば、会計では基本的な商業簿記を利用する業種といえます。小売店では基本的な経理の「丸投げ」的な業務に高い需要がありました。しかし、財務会計を精緻にしていく過程で、専門性の高い会計需要は様々に発生します。地域の実情に根差し、より深く、ほかにはないサービスを提供することで、税理士もまた地域一番店を目指すことができるのではないでしょうか。