2016年12月19日
税理士は、税務書類の作成のほか、中小企業の経理体制の整備に関するアドバイスを行うことがあります。中でも領収書や請求書の保存方法を顧問先に助言したことのある方は多いでしょう。そこで注目すべき新たな税制として、会計証票の電子化、特にスマホによる撮影・保存があります。
従来から、税務署へ事前申請を行うことにより、スキャナを利用して電子化データで領収書などを保存することが認められていました。しかし、機器として認められるのは据え置き式のスキャナのみで、改ざん等への懸念からスマホによる写真データでの保存は認められていませんでした。
経理実務担当者、また会計人からスマホ保存への要望が強かったこともあり、平成28年度税制改正では、2017年1月1日からはスマホやデジカメによって撮影されたデータの保存が可能になりました。
スマホでの保存は、会計業務の利便性を大きく向上させます。領収書等の管理がペーパーレスとなり、領収書の審査、仕訳作業の際、社員が出先で領収書を撮影し、そのまま送付できれば業務の効率化が望めます。以前から、領収書等をスマホで管理するアプリが発売されていましたが、それが税法上の書類としては認められれば、アプリの利便性も高まり、会計証票の電子化の流れが大きく進むことが期待されます。
スマホ保存は、2016年9月30日以後に承認申請を行ったものについて可能。2017年1月1日から運用開始となります。以前にスキャナ保存の申請をしていても、スマホなどの使用を希望する場合は、再度申請を行わなければならないことにも注意が必要です。また、書類の画像には、認定事業者が発行する「タイムスタンプ」を付与することが必要となります。
中小企業の経理体制の構築を業務の1つとする税理士は、スマホ保存データの国税への申請、それに伴う会計業務の進め方についてアドバイスを提供できそうです。最近急速に普及が進んでいるクラウド会計などとの親和性も高いため、ソフトを含めた自計化のための体制を整備するとともにペーパーレス体制を築き上げるという例も多くなるでしょう。
ただし、スマホ管理は便利ではありますが、不正の発生などのリスクもあることを忘れてはなりません。改ざんなどを防ぐための内部統制体制の構築も同時にアドバイスできるようにしておきたいものです。社内業務を適正に進めるための制度、システム構築を総合的に助言することで、付加価値の高い業務を創出できるかもしれません。