2017年3月27日
いまや、会計帳簿などの情報は、会計ソフト等で扱われる電子データでの保存が中心となり、データが格納される場所も、パソコンだけではなくクラウドサーバーであることも多くなりました。そこで問題となるのが税務調査の手法。現在、査察の調査に関して重要な改正が予定されており、税務調査の立ち合いや対策を行う税理士もチェックが必要です。
税務調査に関する根拠法令としては、国税通則法や国税犯則取締法があります。国税通則法は、調査の事前通知など大きな改正が行われたことは記憶に新しいところです。
そして2017年の施行を見据え、準備が進められているのが国税犯則取締法の改正。国税犯則取締法は、税務における強制調査に関する法律であり、全国の国税局が、巨額の脱税などの案件について検察への告発を目的に行う「査察」(いわゆるマルサ)の調査に関して規定する法律です。
国税犯則取締法では、強制調査とともに証拠物件の差し押さえについても規定されていますが、今回の改正は、差し押さえを行う対象としてパソコンのハードディスクや、クラウド上などに保存されている電子情報を付け加えることが柱です。
従来の国税犯則取締法では、帳簿などの差し押さえの規定はありましたが、パソコンのハードディスク等の差し押さえや、データを捜査する法律的規定がありませんでした。もちろん、査察の調査においては、以前からも任意提出で調査はされていましたが、データに関して差し押さえの規定がある刑事訴訟法に比べると、対応が遅れていることは否めませんでした。
法改正によって、査察官が自宅や会社などからパソコンを差し押さえ、ハードディスク内のデータから不正の端緒をみつけることができるようになります。また、WEBメールやクラウド会計帳簿なども、サービス提供企業に開示させ、押収することができるようになります。
マルサの調査は、悪質な違法行為が見込まれる案件に対するものであり、税理士といえども直接かかわることは極めて少なく、改正の影響も少ないものと思われます。しかし、改正そのものよりも、国税当局が調査における電子データの扱いについて本腰を入れていることは知っておくべきでしょう。
顧問先の通常調査に立ち会った際、データをプリントアウトしたり、メディアに書き出したりした経験のある方はいるでしょう。今後、クラウド等、新しい技術に対する調査ノウハウが蓄積されてくれば、通常調査時の質問事項や要望も変わってくることが考えられます。電子データへの対応に伴いどのような調査手法となるのか、情報を収集し、シミュレーションしておくのが税の専門家としての大切な役目となりそうです。