2014年8月29日
起業促進、投資需要の喚起の必要性が叫ばれる現在、求人情報の中でも「ベンチャー支援」を掲げている会計事務所からのものが目立ちます。
また、会計事務所だけでなく、ベンチャー企業そのものが税理士資格者を募集する事例も見られます。
ベンチャー企業における税理士の関わり方は、社歴のある企業とは異なる部分があります。
経理を含めたセクションが確立された企業では、企業が税理士に期待することは会計・税務に限定されることが多くなります。
税理士に対する窓口となる社内の担当者も、経営者本人ではなく経理担当者となることが多いでしょう。
一方、創業まもない人員が乏しいベンチャーの場合、税理士は経営者と顔をつき合わせて業務を行う機会が多くなります。
その場合、記帳代行等、人員を補うタイプの業務の他、より経営の中枢に触れる助言を求められることになります。
ベンチャー企業の起業者には、まず事業に関するアイデアがあります。
積極的な意味の「ベンチャー支援」とは、そのアイデアを形にし、軌道に乗せていくためのバックアップなのです。
たとえば資金繰り。ベンチャー向けの資金調達の手段はまだまだ多いとは言えません。
創業融資などの間接金融ほか、ベンチャーキャピタル等による直接金融、また現在、新成長戦略で進められている創業支援の補助金、
雇用に関する助成金等についての知識も提供したいところです。
新規事業への投資は経営者の意思決定によって行われます。その際、税理士は財務面から可否判断に資する情報を提供する必要があるでしょう。
現在・将来のキャッシュフローを比較するDCF等、ファイナンスに関する見識を身につけておきたいものです。
そして、事業を形にするためには自社だけではなく他社の分析も不可欠。取引先のほか、提携やM&Aの相手を含め、
企業のデューデリジェンスを行う知識も必要です。財務はもちろん、事業に関するビジネスデューデリ、
法務デューデリなど、総合的に企業価値を分析することが求められるでしょう。
ベンチャー企業が税理士に求めることは多岐にわたります。
そのため、税務顧問として関与していたベンチャー企業から、税理士が役員としてヘッドハンティングをされる例も珍しくありません。
転職の際、税理士にはCFO(最高財務責任者)や会計参与等、企業内で活躍するフィールドがあることは考慮したいところです。
外部からにしろ、内部からにしろ、ベンチャーへの関与で期待されるのはビジネス感覚です。
多数の企業の業績を数字ベースで見た経験は、税理士の財産です。会計の知識を中心にしながら、会社経営全体を見つめるように心がけましょう。
勤務税理士がビジネス感覚を身に付けるには、まず目の前の顧問先企業について「結果」としての数字だけではなく、
会社の競争力がどこにあるのか、業績が何によって左右されているのか、といった収益構造を分析することから始めるとよいでしょう。
その中から汎用的な経営手法を抽出する能力が、税理士の可能性を限りなく広げてくれるのではないでしょうか。