2017年3月6日
経済誌、ビジネス誌で大きな話題となっているFinTech(フィンテック)。金融と情報通信技術を融合したサービスにより、あらゆる事業に革新をもたらすことが期待されています。会計とも深く関わる概念であり、税理士事務所においても、事務所運営、業務内容への影響を考えておきたいところです。
FinTechとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語。ITテクノロジーを使い、様々な金融ソリューションを提供するサービス全般を指します。カバーする領域は幅広く、預金、クレジットカード決済、与信や融資、証券取引、資産運用、さらに仮想通貨、クラウドファンディングなどの仕組みも含みます。
FinTechは、これら金融取引にかかるデータをサイバー上で紐づけることで生み出されるサービス。大銀行からベンチャーまで、様々な企業がイノベーティブな事業の創出を目指しています。政府も経済を浮揚する付加価値産業として注目しており、金融庁に「FinTechサポートデスク」を設置、事業創出、起業などの際にハードルとなる金融法制などについての相談窓口になっています。
税理士事務所、会計事務所の業務とも深く関わります。最近会計業界では、クレジットカードやネットバンキングの取引により、自動的に反復的な仕訳を行うクラウド会計システムが話題となっていますが、これもFinTechによるサービスの一つと考えてよいでしょう。
税制でも、電子申告、マイナンバー、会計書類や証票の電子化、スキャナ保存など、FinTechと親和性の高い制度が整備されてきています。税理士が支援する資金繰り、融資申請とのかかわりも見逃せません。自動的に作り上げた会計データを、モニタリングの資料として金融機関に提供できるようになれば、日々の取引から、決算書作成、税務申告、そして与信や融資までがシームレスに行われるようなスタイルが一般的になるでしょう。
最近、会計の自動化の普及が、税理士の危機だとする論調もあります。FinTechもまたその文脈で語られることが多いように感じます。しかし税理士の業務は、形を変えつつも、その価値はむしろ上がるのではないかとも考えられます。
金融と会計の連携に必須の要件は決算書の信頼性です。自動化された仕訳は、間違いが起こったときのチェックがおろそかになることも考えられます。そうなると与信への利用に対してもリスクが高まることになります。会計データの信頼性を高める取り組みに、企業から、そして金融機関からも税理士が期待されています。
また、会計データを「使う」のはやはり人間。データを使い経営判断をサポートする業務も、会計専門家が経営者とコミュニケーションをとりながら行うべきでしょう。FinTechで大量の情報が簡単に手に入れば、より精度の高い経営診断ができることも期待できます。
革新的な情報通信技術は、情報格差という形で、中小事業者に不利に表れることがあります。FinTechを、中小企業がどのように取り入れられるのか、税理士が各種サービスの知識を身に付け、財務経理体制の整備を助言することも重要となっていくでしょう。