2016年1月14日
中小・零細企業では、オーナー社長をはじめ親族が株主で、経営と所有が分離していない会社がほとんど。そのため、株主総会の重要性が認識されず、非開催の企業が多いのが現実です。今回は、税理士が顧問先企業の総会運営についてアドバイスすることの大切さを考えてみたいと思います。
まず大前提として、株式会社の定時株主総会開催は法定されていることですから、非開催が問題であるのは言うまでもありません。しかし、現実として非開催の会社が多い理由は、株主が限定され、経営方針等の意思統一がなされている場合、開催しなくても大きな問題が発生しないからだと思われます。
しかし親族であっても常に意思が統一されているわけではありません。とくに役員給与の変更や定款変更、大きな投資、事業承継など重要な決議で、手続きがしっかりと行われていない場合は、一部の株主から総会の決議不存在、取り消しなどを主張され、禍根を残してしまう例が少なくありません。
総会を開催した場合、必ず議事録を作成しなくてはなりませんが、その議事録は、行政による各種の許認可などの手続きや、商業登記の際に提出を求められることがあります。必要な手続きに合わせて、実際は開催していない「全員参加」の議事録を急ごしらえすることも少なくないようですが、トラブルのもととなります。
また、総会議事録は株主や債権者が営業時間中はいつでも閲覧できることになっています。与信の際に何らかの確認事項ができ、金融機関や取引先から議事録の提示を求められた際に、適切に作成されていなければ「企業統治がおろそかな会社なのではないか」と不安視されることになるでしょう。
以上のように、中小企業であっても、なるべく早く総会の開催を定着させる必要があります。とはいえ、堅苦しく考えることはありません。よほど特別な決議でない限り、形式さえ整えれば運営は苦にならないはずです。
大切なことは「これを行うことで株主総会の決議があったと認められる」という勘所を理解することです。会場の設定等を行わなくても総会の機能を果たす、書面決議なども検討対象となるでしょう。
多くの中小企業は法務部門を持たず、また顧問弁護士もいません。そこで重要な存在になるのが顧問税理士です。総会の大きな目的の一つが決算の承認であることからもわかるように、会計と株主総会は切っても切れない関係でもあります。税理士からの働きかけによって、中小企業の経営者が法令順守についての意識を高め、企業として「一皮むける」ことも期待できるのではないでしょうか。